約 392,560 件
https://w.atwiki.jp/notsadako1231/pages/36.html
北幌市(きたほろし)
https://w.atwiki.jp/notsadako1231/pages/33.html
アニメでは32名の設定。 だが、原作の一学年二学期の期末考査のちづのテスト返却には34もしくは39番と書いてあるように見える。 クリスマス会の参加者名簿には 西川 としお 安藤 ジョーー 八木 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/354.html
「――それでは本日の議題ですが――…」 議長の淡々と会を進める声と、どこかのクラス委員の意見を交わす声。 そして時折、カツカツと書記が黒板に白い文字を書く音がする。私はそれらを『音』として 聴覚で感じてはいたものの、具体的に『何が』とまでは認識していなかった。 有り体に言えば右から入って左に抜ける状態。 普段の私であれば、よっぽどの事がない限り真面目にも聞くし 決議されたことを事前に渡された資料、あるいはルーズリーフにメモしたりもする。 その、普段ならば出来ているはずのことが手につかない。 逆に言うと今の私には『よっぽどのこと』が起きている、ということになる。 あれから一週間と一日が過ぎた。 こなたに告白したという彼は、こなた程ではないもののゲームも漫画も好きらしく あいつとも話があうみたいだった。「みたい」というのは、私が直接確認したわけじゃなく つかさから聞いた話だから。私自身はこなたと、その彼が視界に入るたびに 目を閉じ、耳を塞いで逃げ出していたから。 一週間以上が経った今でも、私の中でも芽を出した感情に名前は付けられていない。 ただ、それは育てているつもりがなくとも、日毎に少しずつ成長しているみたいだった。 何かが決まったらしく、パチパチとひかえめな拍手が普通の教室よりも 幾分か広い視聴覚室に寂しく響く。ふと、ぼんやり資料に落としていた視線を上げ、 夕方といえる時刻になった窓の外の空を見た。 夏の終わりを告げる蜩の鳴き声がどこからか聞こえる。 薄い雲がいくつかふわふわと浮かび、鳶がゆったり上空を旋回している。 こなたが、一人教室で待っていた、あの時程ではないけど 赤く染まった太陽が空を、雲を青や白から橙色に塗り替えていって。 怖いぐらい綺麗だった風景の中、あいつは何を思っていたんだろうかと考える。所詮、私は私で こなたはこなたなんだから答えなんて出ないのだけれど。 「――み……ん…か…みさ…かがみさんっ」 「ひあっ!!?」 突然現実へと引っ張り戻した大きめの声に、声帯と肩、そして背中の筋肉が反射的に反応し ガタッと椅子の揺れる音と共に、私は悲鳴をあげてしまっていた。 余りにも人を引き付ける力を持った風景に、心奪われるうちに 委員会は終わってしまったらしかった。 会が終わった開放感と、それと同時に感じる疲労感で教室が一杯になっている。 私の顔を心配そうに覗き込むB組の委員長――高良みゆきに苦笑を浮かべつつ手を振る。 「ああ、ごめんみゆき。少しぼうっとしてたわ」 「そうですか?それなら良いんですが、具合が悪くなられたのかと思いまして…」 「本当ごめん!大丈夫だから。あ、頼みがあるんだけど…今日の決定事項とか、後で見せてくれない?」 「それは構いませんが……。…かがみさん、この後ご予定とかありますでしょうか」 みゆきの問い掛けに私は首を傾げた。つかさやこなたから、こういう風に言われて どこかに寄ったりすることはあっても、みゆきから言ってくるのはめったにないことだったからだ。 「ない、けど……どうしたの?」 「それは…あ、少し待って下さいませんか?」 私の疑問に言葉を濁し、さらに返事を聞く前にみゆきは踵を返していた。 他のクラス委員は既に教室から居なくなっていて、 一人ぽつんと取り残された私はまた窓の外を仰ぎ見る。 空は、橙色からあいつの髪の色よりもちょっと濃い群青色に変わりゆく途中だった。 「お待たせしてしまい、申し訳ありません。…ミルクティーで宜しかったですか?」 しばらくしてみゆきが戻って来た。手には二本のミニペットボトルが握られていて どうやら下の自動販売機で買ってきたらしかった。 「あ、そんな気を遣わなくてもいいのに…」 「いえ、私が呼び止めたんですから。どうかお気になさらずに」 それに、少々長くなりそうですし、と言いながらみゆきが片方のミルクティーを差し出して来て 私は躊躇いつつもそれを受けとる。 パキッと小気味よい音と共にペットボトルの蓋が開けられ、 中身を一口口に含んだみゆきが、間違っていたら申し訳ありません、と 前置きをして話し始めた。 「……泉さんと何か、あったんですか?」 「!!!」 いきなり、しかもここ数日悩んでいたことの核心に触れられ 驚いた私は、キャップも開けず手の中で弄んでいたペットボトルから目線を外しみゆきの方を凝視した。 「な、んで……」 「…気のせいじゃなかったようですね…。…泉さんの様子も気になっていまして…」 「…………」 こなたの名前が出たことで、私はより一層緊張した。ペットボトルの蓋を開ける乾いた音が 酷く場違いなものに聞こえる。体温で大分温くなった中の液体で唇と喉を湿らす。 喉を通っていった液体に初めて、私の喉がからからに渇いていたことを知らされた。 「泉さんにも…おせっかいだと思われるかもしれませんが… お話を伺ったんですが、上手くはぐらかされてしまいまして」 ごくん、と知らず唾液を飲み込む。その音がやけに大きく響いて 慌てて、咳込むふりをしてごまかした。 私は先刻から何も話していないけれど、みゆきは意にも介さないように話を続ける。 「――実は、泉さんとかがみさんの様子が以前と違うことには 大分前から気付いていました。かがみさんは、約一ヶ月前から。 泉さんはそれよりもさらに前から」 「最初は何か…小さな諍いがあったのか、とも思いました。 ですが、それはお二人の問題。当人同士が解決しなければいけないものです。 私が口を挟むべきではない、と考えました。 しかし一ヶ月以上が経っても一向に以前のようになる気配がありません。 諍いとは違うのではないか、という思いが生まれました」 そこでみゆきは一度口を閉じ、何かを振り払うみたいに目を閉じ 二、三度首を振ってまた、言葉を紡ぐ。 「私が、介入すべき問題ではないのかもしれませんが……今のお二人を見ているのは 辛いです。また、以前のように楽しそうにお話する泉さんとかがみさんが見たいんです。 …差し出がましいようですが、お二人の間に何が、あったんですか?」 その問いは二度目だ。だけど、私自身何がどうなのかよくわかっていない。 私の中に渦巻くこの気持ちは? こなたの行動の理由は? 疑問が有りすぎて何から話していいのかわからない。「…断片的でも良いんです。人に話すことで楽になることもありますから。 もし、話したくないのであれば無理に、とはいいません」 ああ、みゆきは。 この友人は、私たち二人のことをこんなにも思ってくれている。 そう思ったら、両親にも、まして妹には言えなかった言葉が 涙と共に一気に溢れ出していた。 「…っ!!わ…私っ……あいつに…っく、こなたに、告白されて…っ 友達としか思えなかった、のに、拒絶、したのに…それでももやもやしたのが残って……! どうしたらいいのかわかんなく、て……っ!」 一度崩れてしまった堤防は水を止める術を持たない。胸にあったものを全て吐き出す 私の言葉と言う名の水――いや、しゃくり上げていたせいで単語すら怪しかったかもしれない――を みゆきは辛抱強く最後まで受け止めてくれた。 すん、と時折鼻をすする私と、時計だけがこの部屋に存在する音源。 私はいつの間にかみゆきに抱き締められていた。こういう風にされるのは 小学生、下手したら幼稚園の時以来だな、と思う。 …訂正。こなたはぺたぺた引っ付いてきてたりしたっけ。 けれど、こなたとは違う、母親が子供をあやすような抱擁。小さい子扱いされてるみたいだけど 不思議と嫌な感じはしなかった。恋人同士のそれの胸の高鳴りの代わりに、 なにもかもを預けられる安心感がある。 「……落ち着き、ましたか?」 「ごめん、みゆき…。…はは、情けないわね」 同級生に縋り付いてわあわあ泣いていた自分の姿を脳裏に描いて 恥ずかしさに、なるべく軽く笑って体を離した。 「いえ、良いんですよ」 にっこり笑うみゆきは、同い年とは思えない程の母性や包容力を持っている。 聖人君子というよりは聖母マリア様。今の私にはそんなイメージが浮かんでいた。 もっとも、どっちも似たようなものなのかもしれないけれど。 「…かがみさんは、泉さんが嫌いですか?」 「嫌いなわけないじゃない」 これは、自信を持って言えること。 「では、好きですか?」 「好き、ではあるんだと思う。ただ…その『好き』の種類がわからないっていうか…。 …近くに居すぎたせいかしらね」 大泣きして落ち着いたおかげか、前よりもすんなり言葉が出て来る。 まだまだ曖昧だけれど、それでも心の中のもやもやの輪郭が見えた気がした。 「それをそのまま伝えれば良いんですよ。言い方は少々厳しいかもしれませんが、 今のかがみさんは……もちろん泉さんもですが……中途半端に逃げているだけです。 恋人としても、友達としても付き合えていない…」 さっきとは打って変わって、真面目な顔をしたみゆきがじっと私を見つめて来る。 目を逸らしちゃいけない気がして、私も瞬きもせず見返す。 「それでは泉さんもかがみさんも傷付くだけです。 ですからかがみさんは…泉さんともう一度、向き合うべきだと思います。 ……なんて、偉そうにすみません」 「ううん…その通り、だから。考えとてみれば、私ずっと気を遣ってた。 普通に接しているつもりでも、どこか腫れ物に触る態度で…。 それは、こなたも同じだと思う。だから、明日こなたと話をしようと思う。 私の気持ちをぶつけてこようと思う」 そう宣言すると、みゆきはまたいつもの優しい笑顔を私に向ける。 「その結果の関係がどうであろうと、お二人なら大丈夫ですよ」 みゆきに何度もお礼を言ってから家路に着く。一ヶ月前とは違い 心はさっぱりしていて、なぜだかとても穏やかな気分。 玄関を開けると、ちょうど台所から出て来たらしいつかさとばったりあった。 「お姉ちゃん、お帰り。今日は遅かったね……って、目、真っ赤だよ!? どうしたの!?」 「ただいま。あー…これは…色々あって…」 まさかみゆきの胸で大泣きしていたとは言えない。そしてその理由も。 姉としてのささやかなプライドだ。 「…こなちゃんと何か、あったの?」 靴を脱いでいる私につかさが近付いて、少しだけ声のトーンを落として話し掛けてくる。 「違うけど…もしかしてつかさ、私とこなたの様子が変だとか思ってた?」 「……うん。ちょっと前からお姉ちゃんもこなちゃんも なんか無理して笑ってるみたいだったから…」 …まさか妹にまでバレているとは。ぼんやりしてることが多いつかさだけど 今回はそんな妹にすらはっきり解るほど変だったのか、私たちは。 「さっき、みゆきにもおんなじこと言われたわ。 で、発破かけられちゃった。 大丈夫。明日、こなたと向き合ってくるから。 ……心配かけちゃったわね」 「ううん、私も今のお姉ちゃんとこなちゃんを見てるのは辛いから……頑張ってね」 私たちのことをまるで自分のことのように心配するつかさに、また感謝の涙が滲みそうになる。 それをぐっと抑えて、涙の代わりにありがとう、と呟いた。 その夜。私が寝るには早い時間に部屋のドアがノックされ、 続いて枕を抱えたつかさが入って来た。 「えへへ…お姉ちゃん、今日は久しぶりに一緒に寝てもいい?」 机に向かって明日のことを考えていた私はくす、と苦笑を漏らして立ち上がりベッドに入る。 「全く、しょうがないわね。いいわよ、一緒に寝よ?」 知らない人から見れば姉に甘える妹の図なんだと思う。でも、違う。 本当に甘えているのは私の方だ。つかさは無意識にかもしれないけど、敏感に 不安な私の気持ちを察知して、こうやって支えてくれているんだと思う。 甘えるのが下手な私の代わりに。 電気を消したつかさが私の隣に潜り込んでくる。 ぼそぼそと、そうする必要なんてないのに小声で話す姿は小さい頃に戻ったよう。 「ねぇ、つかさ。好き、ってどういうことなのかな?」 「ふぇ?す、好き?」 「っていうか…友達としての『好き』と恋愛感情としての『好き』の違い、かな」 まだ暗闇に慣れない視覚の中、隣でつかさがもぞりと動く気配がした。 きっと、一生懸命考えてくれているんだろう。 「…んー…全然違うと思うよ? 恋愛感情で好きになると、その人が居るだけでドキドキするし …毎日が楽しく感じられる、かな」 一つ一つ確かめるように言うつかさの言葉はとても実感が篭っていたけれど、 やっぱり私には、いまひとつピンとこないものだった。 「…つかさは、恋、してるの?」 「うん、してる。大好きな人がいるんだ」 漸く暗さに慣れてきた私の目に映った微笑む妹の顔はもう、雛鳥みたいに私の後を付いてきていた 甘えん坊の表情じゃなかった。 どくん 心臓が高鳴る。自分で決めたことのはずなのに、投げ出してしまいそうになる。 私はB組の教室、こなたの右隣りに座っていた。時刻は12時半。 いつものメンバーでいつもの昼食。違うところは私の心中だけ。 今日はある意味で、私とこなたの関係に終止符を打たなければならない。 そのためには、こなたを誘う必要がある。 どくん まただ。口を開こうとする度に心臓がきゅうっと収縮して、臆病な私が顔を覗かせる。 ちらりとみゆきとつかさの方を見ると私を勇気付けるように頷いてくれた。 それに励まされた私は、大きく息を吐いてから、普通を装ってこなたに話し掛けた。 「こなた」 「んー?なにかな?かがみんや」 「……今日の放課後時間、ある?」 「……なんで?」 途端にこなたの顔が強張る。でも、それも今日でおしまいにしないといけない。 私のために。それに、なによりこなたのために。 「大事な話がある、から…。放課後、校舎裏に来てくれない?」 「……わかった……」 瞬く間に時間が過ぎていった。きっとそれは間近に迫る秋という季節のせいだけじゃないはずだ。 みゆきとつかさは邪魔しちゃ悪いから、と一緒に帰っていった。 あの二人も上手くいけばいいな、と思う。昨日のつかさの表情を思い出して 自然にそう考えた自分に驚いた。ちょっと前までは同性同士というだけで 恋愛対象にはならない、と思っていたのに。 「ごめん、待った?」 校舎の影から通学鞄を持った青い髪の小さな少女が小走りでやって来る。 「ちょっとだけね」 「それで、話って何?」 校庭の方からどこかの運動部の掛け声が聞こえて来る。 蜩の鳴き声はもうしない。代わりに鈴虫やキリギリスが季節のメロディを奏で始めている。 夕日が、長い影を私とこなたの足元から作っていた。こなたの表情は 普通ならば逆光のせいで見えないはずなのに、距離のせいか不思議とよく解る。色々考えたけれど、言いたいことは結局上手くまとまらなかった。 だから、思ったことをそのまま伝えよう。 早いリズムを刻む心臓。汗が伝う背中。唾液の出ていない口内。 それらを全部無視して、私は漸く一歩を踏み出した。 「ごめん!私、こなたに謝らなきゃいけないことがある。 いつも通りにする、って言ってて全然出来てなかった。余計にこなたを傷付けた。ごめん…!!」 「そんな…わ、私も…私こそ、かがみに謝りたい…!!」 私が一息つけるのと同時にこなたが叫んだ。 その姿がいつかのこなたと重なって、目頭が熱くなる。 「私っ……私もかがみに言ったこと出来なかった…!拒絶、されたのに 諦められなく、て。…告白された時、よかったと思った。 付き合っちゃえばかがみのことも忘れられると思った。友達として付き合ってみたけど…だけど 全然、ダメで…。話してても、かがみと比べちゃって…っ。 かがみのこと、もう、友達とは思えないよ…ごめん…っ」 一言喋る度に大きな瞳に涙が溜まり、声には泣き声が混じる。 違う。私はそんな顔を、声をさせるためにここに来たんじゃない。 「…もう一つ、謝りたいことがあるの。私、こなたに告白された時女同士だからとか そんなことで最初から考えないようにしてた。 あんなにも真剣なこなたにちゃんと向き合ってなかった」 そこで私は一つ息を吸い込んで。私が本当に言いたいのはここからだ。 「こなたと、あの彼が一緒に居る時もやもやした気持ちになった。 …多分、嫉妬。……私はこなたのことが好き、なんだと思う。 だけど正直どういう意味の『好き』なのか私自身よく解ってないの。 ……だから、もしあんたが私のことを本気で好きなら……惚れさせてみなさいよ」 ――そう。これが私の出した答え。正直な気持ち。そして、後はこなた次第だ。 羞恥も、なにもかもかなぐり捨てて一気に言ってこなたを見つめる。 こなたは涙も引っ込んだみたいで、呆けた顔をして私を見てる。 「……か、がみ。それ、って、私にもまだ可能性はある、ってこと?」 「…ま、そうね。せいぜい頑張って私をときめかせてみなさい?」 「――――っ!!かがみぃっ!!」 「な………んっ……」 体を震わせたこなたが飛び付いてきて頬に、不意打ちのキスをされた。 一瞬、触れ合うだけのそれが離れてこなたがくふ、と笑う。 前みたいな、日だまりの中に咲く一輪の花のような本当の笑顔で。 「絶対落としてみせるからっ!覚悟しててよね?」 キスまでしたくせに、恥ずかしいのか 頬を夕焼けよりも赤く染めてあいつは走り去っていった。 「そう簡単に落とされてたまるもんですか」 口調とは裏腹に、笑っている私は端から見れば怪しいことこの上ないに違いない。 この前よりもいきなりのキスなのに 不思議と嫌じゃなかったのは――まだもう少し言わないでおいておこう。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!! -- 名無しさん (2022-12-27 16 25 21) こなたが甘えてくればかがみんはいちころでしょ -- チョココロネ (2013-11-15 23 33 40) こなかが試練 -- かがみんラブ (2012-09-23 17 18 51) うん、普通に考えて、みwikiさんでしょww -- 名無しさん (2010-09-06 17 44 34) ↓つかさの好きな人は、みwikiさんですよw -- 名無しさん (2010-08-30 13 01 55) そんで結局つかさの好きな人って誰よ? -- 名無しさん (2008-08-29 19 52 09) よかったね、めでたしめでたしだ。 -- 名無しさん (2008-08-29 00 23 25)
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/339.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >君に届け>【MAD】君に届け×君の知らない物語【supercell】】 【MAD】君に届け×君の知らない物語【supercell】 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れる【MAD】君に届け×君の知らない物語【supercell】の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 ニコニコ動画 このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画MAD 君に届け アニメ 君に届け ただしイケメンに限る MAD supercell 君の知らない爽子 能登麻美子 能登かわいいよ能登 男でも買うべき少女コミックだ コメント(感想) 動画【MAD】君に届け×君の知らない物語【supercell】に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/booker/pages/340.html
2期きたー。期待してまっせ。 チャラ男きたー。 すれ違い展開は観ててはらはらする。 十話以降風早がイケ面すぎ。 episode.0『片想い』 episode.1『バレンタイン』 episode.2『2年生』 episode.3『忘れて』 episode.4『わかってない』 episode.5『すきな人』 episode.6『好意と迷惑』 episode.7『あきらめちまえよ』 episode.8『届け』 episode.9『告白』 episode.10『ここから』 episode.11『祭りのあと』 episode.12『大事な人』
https://w.atwiki.jp/talesrowa/pages/366.html
Normal End -君に届け- これまで、幾千、幾万と傷付いてきて、 俺のしてきたことは、一体何だったのだろう。 [The edge of an oath] 2日前に味わった感覚を、もう1度味わうとは思わなかった。 いや、味わうことを願ったのは紛れもない真実だが、この感覚はたった2日前というには 余りに忘却の彼方に追い遣られた感覚であり、濃厚な60時間によって身体はこれを微塵も覚えていなかったのである。 そして、厳密には、過去と現在に並べられた2つの感覚は別物だった。 初めは、少しの不安と決意が交わり合った感触だった。少なくとも、吐き気を催すほどの気色の悪さはなかった。 今は、余りある絶望と諦めが交わり合った感触。 自分1人だけが生き残り、主催者の下に導かれようとしている、その事実が既に虫唾の走るものだった。 自分でも願っていたのに嫌な心持しかしないというのは、ある意味新鮮だった。 周囲に渦巻く螺旋の光が消えていく。 眠りから覚めるようにフィードインしていく景色。 ぼんやりとした視界が完全に明瞭となって、自分の立っている場所があのホールだということに気が付いた。 縦横の比率が統一された正方形のタイルに吹き抜けの天井、仄暗い明度。 それらが、始まりの場所に戻ってきたのだと、懐かしくも黴のような不快な臭いで告げる。 空気は生暖かく、まるでホールが何かの生物の腹の中のようで、全体を呑む重く一体とした雰囲気が肌に張り付く。 唯一違うとすれば、最初にマグニスに殺された筈の男性の死体がないこと“だけ”だったが、 ミクトランが律儀に処理したのだと彼は判じた。 呼吸をすればするほど、肺に石が積もっていくかのような重み。 彼も、剣も、何も言わない。 一者一刃、一対の整った緊張感が全身を満たしていた。この2人のものだけでホール全体が埋まってしまうかというほどだった。 遂にここまでやって来たのだと、これから対峙する相手は一筋縄ではいかないのだと。 そして――――何よりも、目前にいるのだと。 王は寸分違わぬ場所にいた。ロウソクの炎がちらつくバルコニーの上である。 「来たか。まずは、おめでとうとでも言おうか」 炎から生まれる仄かな光がミクトランの金髪と頬を撫で、口元に浮かぶ鈍角の緩やかな笑みを照らし出す。 一斉にホールの燭台に炎が灯る。 『ミクトラン……!!』 ヴェイグの右手に収められた大剣、ディムロスは因縁の敵に怒気を吐いた。 するりと受け流すかのようにミクトランは小さく笑う。 もう僅かに口角を上げれば少しは爽やかな好青年の要素を見出せただろうに、酷薄な微笑と細められた鋭い目――笑ってはいない――が、 それらを見事に掻き消していた。 「やはり天地戦争最強の携行兵器と謳われるだけあるか。3本の内、1本が最後の1人の手にあるとはな」 『その賛辞、喜んで受け取らせてもらう』 言葉に引き摺られるように、無言でヴェイグはサックを地に置き、剣を構える。 『お陰で、貴様を滅することも適う』 意気を吐きながらも、それでも今にも溢れ出しそうな感情を抑えるかのような、低く抑圧された声だった。 しかし、それすらも些細であると、ミクトランは高らかに笑う。 高みから野良犬の唸りをただ眺め、見下す姿は王に相応しい。どれだけ威嚇しようと決して届きはしない。 「何を熱り立っている? 私は優勝者に、私と戦う権利を与えたのではない。彼の者の願いを叶えると言ったのだ」 構えを解かず、ヴェイグは沈黙を保ったまま上空のミクトランを見つめる。 「黙することはない、ヴェイグ・リュングベル。貴様には正当な権利がある。 2日と半日をかけて行われたこのゲームを貴様は勝ち残ったのだ。 0.02にも満たない勝率を1にまで引き上げたのだ。これは名誉あることだぞ? 何も悲観することはない。死ぬ者は死に、生きる者は生きる。これは必然のルールだ。 『殺し合いをさせられた』のではない。『殺し合いをした』のだ。 全ては己の意思と本能が命じた結果、その血塗れの手が何よりの証拠ではないか。 さあ、貴様はその汚れた手と引き換えに何を願う?」 いつしか、ヴェイグの身体に震えが走っていた。隠すにも震えを抑える腕は1本しかなく、その腕で握る左腕は既に原形を留めていない。 震えが絶望により引き起こされたか、たった1人で55の命を握った傲慢な王への憤怒かは分からなかった。 だが、1つだけ分かるのは、これが憎悪の類だということ。 憎しみが青い炎で形容される理由が分かる。全身に寒気が駆け抜けていく。 振り切るようにヴェイグは結いの解けた頭を大きく揺らし、力強く剣鋩を向ける。 「……正しさも、間違いも、何もいらない。俺は全てを終わらせるッ!」 ミクトランの笑みが一気に消え失せた。中途半端に見開いた、それだけで身体を射抜いてしまうような目がヴェイグを捉える。 「王の施しを無碍にするというか」 ふわり、と白い外套が空気の流れとは独立してはためく。 宙に浮いたミクトランは次の瞬間にはホールに上に降り立っていた。 びっしりと敷き詰められたタイルのそれぞれに、幾つもの光によって複数現れた影が侵略する。 影はロウソクの後光によって淡くも長く伸び、巨大な王の影を生み、王の表情を隠した。 たじろぐことなく佇むヴェイグは、目の前の影が僅かに動いたのを見た。 胴体の横にある細長い影の先端が、頂点と胴の付け根辺りに同化する。 とんとん、という高い音が炎の弾ける音の中で微かに聞こえた。 「貴様の首にある“それ”を忘れたか? 首に嵌められている内は貴様の命は私が握っているのだぞ? 命を粗末にすることはないと思うがな。素直に言ってみるといい」 ヴェイグは影の中に下弦の月が浮かぶのを見た。ひどく冷たく、冴え冴えとした、月。 外だけ見れば綺麗とも言えたかもしてないが、秘められた陰鬱なものを感じ取ってしまえば不快極まりないとしか言えなかった。 その月は、紛れもない嘲笑でしかないのだから。 噛み締められた歯がぎりりと鳴る。 「それは……貴様が言う科白じゃないッ!!」 蒼い、フォルスのオーラが全身を包み、そして熱と冷気が均一に織り合わされていく。 紛れもない臨戦態勢、今から牙を剥くという合図。 1つの意思、目的の下同調したヴェイグとディムロスの瞳が憎悪に染まる。 それを前にしても未だ涼やかな表情を見せる王は、やれやれと肩を竦めてみせた。 強張りのない、多彩な顔を見せる姿に緊迫感など何1つなかった。せいぜいが目障りな羽虫を退治する気だるさだ。 「どうであろうと、私に楯突こうとするか――」 マスターと人数は違えどそれは天地戦争の決戦の再現を思わせた。隻眼隻腕の剣士が炎の大剣を手に駆ける。 そのハンディを前にしてだろうか、ミクトランは走りも退きもしない。 王として有利点を与えるどころか不利点は相手にあるのだ、ミクトランが退かないのは当然と言える。 「残念だよ。こちらはその気であったというのに――」 鈍色の刀身が僅かばかりの光に輝き、反射光は流れるように位置を変えていく。 刀身から切先へ、横に薙がれた剣は王の胴体を輪切りにしようと目論む。 しかしミクトランは小さく後方へバックステップを取り剣の間合いから逃れる。空振るヴェイグを尻目にほくそ笑んだ。 「自ら手を下せぬのが惜しいがな。構わん、やれ」 ぱちん、と親指と中指を擦らせ指が鳴った。 ヴェイグは横に振られた剣を、まるで指揮棒を振るうかのように軌道を元に戻し、更に上手へ振り上げる反動をそのまま前進行動へと反転する。 身体を捻らせ、詰めた間合いを更に詰める。 片方しかない目が合い視線が交錯した。相手の色は不敵、しかし直ぐに視点は外れそのまま後方へとすり抜ける。 ぴ、と首元の不穏な音が耳内で駆け巡る。残念ながら30秒後などという生易しい設定ではない。 「崩龍――――」 ミクトランは振り向かぬまま、極上のワインを飲み干し酔いの回ったような上品な笑みを浮かべ、目を閉じた。 ぼぅん、という爆発音が背後で聞こえた。 金属の破片、砕けた首輪が落ちる音がした。“それだけだった”。 熱、いや冷気。ミクトランに一閃の痛みが走る。走り、感じる頃には――銀髪の剣士ヴェイグ・リュングベルは一瞬で王の目の前に現れ、 「――――無影剣ッ!!」 ひとひらの雪が花弁のように舞い、瞬時に無数の氷の断片となってミクトランの身体を傷付ける。 しかし、最も強大な一閃、ヴェイグとディムロスそのものは、王の両手に握られ交差したソーディアンに阻まれた。 ディムロスは驚愕の声を上げるも王は意に介さない。 顔には笑み。但し、余裕ではなく引きつった。 「貴様……何故生きている?」 3本の剣が交錯する中、ミクトランは問う。剣を介して交わり合う視線は互いに鋭い。 「俺のフォルスは……炎すら凍らせられる。そして、シャーリィの術を耐え切った。 タイミングを見計らい、瞬間的に最大出力で頭部外側を凍結させる。爆破の熱と衝撃さえ耐え切ればこちらのものだ」 ヴェイグの表皮には、首輪の爆破で砕けたのだろう氷片により、無数の切り傷が刻み込まれていた。 何より、首輪があっただろう位置を中心に火傷が広がっていた。 それでも首は繋がっている。頭ごと飛ばされるよりは数倍ましだ。 視線の交錯の中でぎりと歯が鳴った。 「姑息な真似を。下賎な地上人めが」 「命は粗末にするものではないんだろう?」 刃の滑る耳障りな音が空間を満たす。上下に揺らめき緊張の波を破りそうで破らぬ緊迫の応酬。 互いに反発し合う交差の剣はどちらかが隙を見せればすぐにでも終わりそうだった。弾かれた瞬間が勝負。 しかし、ミクトランがにやと笑う。 「氷が得意属性となれば炎のソーディアンの真価も使えまい。“ソーディアンは白兵性能だけが取り柄ではないのだよ”」 3本の内の1本、二刀流で用いるには大きすぎる幅広の剣が光を発する。 名はクレメンテ。ソーディアンの中でも随一の“晶術性能”を誇るものである。 『――ヴェイグ、下がれ!!』 「遅い!」 クレメンテのコアクリスタルが煌き、風刃の矢ウインドアローがほぼ零距離に近いヴェイグの心臓を襲う。 ディムロスの声で反射的に大きく下がり、直撃は避けるも、矢は狙いを研ぎ澄まし彼の右腕を掠る。 衣服が裂け肉が裂け口が裂け悲鳴を発する。 右腕の先にあるディムロスだけは取り落とさなかったが、血が流れる右腕はだらりと垂れる。 使い物にならなくなった黒焦げの左腕も含めて、今の彼の姿は無防備に立っているようにしか思えなかった。 少し荒くなった息が、確かに刻まれる時を告げる。 尤も、呼吸を1回、2回と繰り返したところで進む秒数は、状況の好転を示さない残酷なものであったが。 『……何故、残りの2本を持っている? マスターはどうしたッ!?』 ディムロスの赤い感情が流れ込んでくる。 ヴェイグは知らぬことだが、ディムロスは1度、本当に僅かな間であったが、2日目の朝にソーディアン2本と邂逅していた。 ちょうど、この下らないゲームに参加させられたソーディアンマスターと符合した。 よって残りの2本、フィリア・フィリスのクレメンテとウッドロウ・ケルヴィンのイクティノスは埒外の存在であったのだ。 この死合いには関与していない、ありすらしない、と。 しかし、今こうして2本は炎の大剣の目の前にある。その事実がディムロスには受け入れがたい。 ミクトランは悲痛を餌に嗜虐的な笑みを浮かべた。片手直剣を右に、魔法大剣を左に構えている。 「覚えていないのか?」 簡潔な問い掛けにディムロスもヴェイグも困惑げな表情を浮かべる。 「クク、覚えておらぬだろうな。なあに、些細なことだ。忘れてしまうとはその程度のことなのだよ」 左手のクレメンテが宙に浮き、くるくると回転を始める。 嵌められたコアが輝き、術だと判断したヴェイグはすぐさま突撃する。目の前の詠唱など絶対の好機だ。 「それに、知る必要もなく死ぬ――ホーリーランス!!」 透き通った浅緑の光が何本もの長槍と化し、ヴェイグ目掛けて降り注ぐ。 「絶・瞬影迅!!」 だが、ホーリーランスは追尾系の術ではない。具現した姿こそ違えどミトスとの戦闘で同じ術を喰らい、 「瞬間的に速度を上げる」という対策を知ったヴェイグには通じない手だった。 散らばった氷の破片に碧光が映え、身代わりにでもなったかのように砕かれる。 光の槍を突破した彼は突貫衝力をそのままにミクトランに迫る。狙うは術の発動後による硬直。 しかし、ミクトランとて剣術の達人と云われる人物。右からの袈裟懸けをイクティノスで早々に受け止め、離し、間髪なく次への一撃へと持ち込む。 甲高い金属音と共に火花が散る。 本来とは異なり片手のみで大剣を振るうヴェイグもまた、剣を受け流し状況の悪化を逃れた。 ――イクティノスの本分は刀身の長さによるリーチとそれを生かした突きの威力である。 敵の特色を弁えた賢明な王は迷うことなく次の一手を突出と定める。 風を切る一撃がヴェイグの顔面を狙う。彼は咄嗟に顔を右に逸らし、開けた長髪が風圧で泳いだ。 突きの後は総じて手薄になる。しかしヴェイグは攻撃には出ない。 ミクトランの腕が胸元へ、突きを繰り出したイクティノスが首元へと薙がれている。 右手のディムロスで相手の剣の腹を押さえ込む。それで何とか斬首刑は免れた。 身体を引き体勢を整える。整えて、左肩が何かに触れたのを感じる。 壁だ。 はっとしてミクトランを見遣る。にたりとした不敵な笑みが浮かんでいた。 「少々軽んじていた。流石に勝ち残ってきただけはあるか」 片手ずつ競り合っていた剣達にクレメンテが加わる。片手と両手、1対2では差は自明だった。 「それでも、隻眼、腕は1本、満身創痍……そして元々の実力差、遠く及ぶまい」 剣が次第にヴェイグに迫っていく。自然と壁に沿って身体が床に沈んでいく。 食い縛られた歯の間から息が漏れる。声にならない声の成れの果てだった。 大剣のみで支えるのにもう1つ手を添えられれば、と叶わぬ願いが恨めしい。 「貴様の声はよく聞かせてもらったよ。全てを終わらせる、か」 弾かれたようにヴェイグは目前のミクトランを見る。 「狂っているから、間違っているから壊す」 録音された音声を再生するかのような、迷いない澄み切った声。 「本当か?」 ヴェイグの頬に汗が一筋流れる。 「世界が狂っているのではなく、貴様が狂っているのではないか? 世界が間違っているのではなく、貴様が間違っているのではないか?」 刃が更に押されていく。力と力の迫り合いでかたかたと剣が震える。 心の優勢と劣勢を示すバロメーターとしてこれ以上的確なものはない。 何も言わぬヴェイグに、ミクトランは不快な笑みを尚も続ける。 「貴様だけが誤った像を結んでいるのだ。世界は今も“正常”だよ」 見つめ合っていた視線が逸れる。ミクトランの目は左に動いていた。 「全てを終わらせるのならば、今終わっても大した違いはあるまい?」 目線はヴェイグの左腕へ。そして、王は虫を踏み潰しでもするかのように左肩の付け根に思い切り足を踏み落とす。 痛々しい絶叫が伝播した。 元々向こう側の見えていた左肩は辛うじて胴と繋がることで左腕と名乗ることを許されていたのだ。 王のスタンピングにより僅かな肉と神経は接続を断ち、みりみりという音を立てて床へ落ちた。 激痛による生理的な涙がヴェイグの瞳に浮かぶのを見て、ミクトランはとても浮き立ったような顔をした。 この上ない悦楽に耽るような、そんな反吐の出る顔だ。 均衡は更に傾き、剣はそろそろヴェイグの首元にまで迫ろうかという頃合だった。 それでもミクトランは次はどれにしようかといった品定めをする面を変えない。 顕わになったままの左目、氷で保護された脇腹、胸元の火傷、どこも手を出すには実に旨味のある箇所であった。 品評の目を頭部に移して、ミクトランは顔をしかめた。 ――笑みだ。長めの銀の前髪に伏せがちな顔が覆われる中に、笑みが浮かんでいる。 「俺が間違っている、か」 震えのない声がホールに響いた。どこか安らかささえ感じる音色に王は顔を歪める。 「思えば、俺はずっと矛盾ばかりだった。 姿の違うクレアをクレアだと思いながら認めることが出来ず…… クレアが悲しむと分かっていながら、クレアの下に帰るために凶行に走り…… 誰かを助けようとしても、誰かが傷付き…… 償いのために守ろうとしても、マーダーにすら手を掛けられず…… 間違った世界を壊すという大義名分も、只の逃避でしかなく…… そして、最後は世界が狂っているのではなく、俺が狂っていた」 淀みのない声が続く。 動かぬ剣に、ぴんと張った静寂は彼の声を聞くかのように一切の音を失くし傍聴していた。 「始めから、俺が間違っていた――――」 笑みの浮かんだ顔が持ち上がる。笑みは、未だ消えず。 「――――ならば、今更矛盾の何を恐れる必要があるッ!!」 そこには、一種の悟りが生んだ強い瞳があった。 「俺の行動も、何もかもが真と偽の垣根を失くす。なら俺は、俺のすべきことを為すのみッ!! 俺の望みは、全てを、俺を終わらせることだけだッ!!」 瞬間的に全力を込め剣を弾き返す。壁に寄り掛かったまま中立ちだった足に力を入れ、剣戟と共に斬り抜ける。 力の入っていない一撃だ。元から致命傷は狙っていない。 狙ったのは――相手の背後に回ること唯1つ! 「ディムロス、力を貸せ! これで……終わらせるッ!!」 ヴェイグの身体から青い光が、ディムロスの刀身から赤い光が走る。 織り合わされる各々の光、ヴェイグの中に旋律が流れる。重なり合う波長、紡ぐは終焉。 ミクトランは振り返る。そこにあるのは1つの驚喜だけだった。 焦りも何もなく、穏やかに彼を眺める。決戦を前にした恐れなき瞳とでも言えばいいのか。 2本のソーディアンを納め、ミクトランの周囲に光が満ちる。目を伏せる姿に金髪が揺らめく。 堂々と待ち構える姿は、まさしく王そのものであった。 光は、あまりに眩くホール全体さえ満たしてしまいそうだった。 目の前に光の波が迫り、視界が真っ白く染まるも、ヴェイグは止まらない。 彼が剣を翳す。朱色の線が幾つもの円を作り、熱波がディムロスを包む。 『燃え盛れ、紅蓮の炎ッ!!』 刀身から発せられた強大な火炎は弧を描き王へと駆け、――戻れ!――波のように広がり炸裂する。 「……楽に死なせはしないッ!!」 炎が命中する前から駆け出したヴェイグは、ディムロスを振り下ろし、ミクトランの身体を切り刻む。――戻れ! 一撃一撃、剣を加えるごとに氷が散る。――戻れ! 王の身体に1つ、また1つと傷が刻まれていき、白い外套が赤く染まる。 それでもヴェイグは手を休めない。 全ての憎しみをぶつけるかのように、例え間違いであろうと、今まで積み重なってきた怒りを叩き込む。 一撃の重さは憎悪の証。傷の深さは絶望の証。 一歩下がり、大剣を顔まで近付くほどまでに引き絞り、最後の一撃、チェックメイトへの手を掛ける。 『行け ――――――ヴェイグッ!!! 戻れ 』 ぱちり、と手品でもするかのように指の鳴る音は氷の中に吸い込まれた。 『「奥義!! インブレイスエンドッ!!!」』 腕が、剣が、王へと迫っていく。 全身を包むほどまでに形成された氷の結晶を突き砕き、ミクトランの身体が貫かれる。 大きく開いた胸の風穴から血と肉が飛び出ていく。整った顔の口から血が溢れ、隣接するヴェイグの顔面にも降りかかる。 再び、両者の視線が合う。ミクトランは嘲笑を浮かべた。 剣を勢い良く引き抜いて、血のしぶきが舞う。身体が崩れていき、どさりと倒れ込む音だけが耳に届く。 息を荒々しくつく音だけがホールで反響する。 真っ白に近かった頭が鉄の臭いを嗅ぎ取ったことで、やっと目の前の視界が開けていく。 仰向けになったミクトランの身体は動かない。目の前に血の池が広がっていき、開いた目と口元の笑みだけが固まっている。 肩を上下させ、呼吸音が頭に詰まっていく。 身体が、熱い。 [be my Last] 「……勝っ、た……」 ぽつりと小さな呟きが自然と口から零れ出る。 「俺は、勝ったのか……?」 感慨のないまっさらな言葉だ。顔もまた、ぼんやりしたような曖昧な表情しか浮かんでいない。 未だ状況を、実感を掴めぬ彼はただ立ち竦んでいた。 『そうだ。お前は勝ったのだ、ヴェイグ』 ディムロスの言葉が聞こえてきて、ヴェイグはやっとその場にへたりと座り込んだ。 片腕がなく、いきなり湧いて出た疲労の前に尻餅をついて座り込む情けない姿だったが、彼は何も思い浮かばなかった。 彼には何の表情も浮かんでいない。敢えて言えば、汗に混じって頬を一筋の涙が伝っていた。 但し、どちらも何も把握出来ないからではなく、喜びが溢れるからでもなく、ただ――――ただ、心中に空しさが漂っていた。 「そう、これが、全ての終わり……」 どこを見るともなく、ましてや地に臥せる無様な王を見る訳でもなく、ヴェイグは呟く。 「こうした所で、何も戻ってきはしない……」 無音の、炎の弾ける音のみのホールに生気などまるで感じられず。 「世界に、色がない……」 広いホールの中でただ自分だけが生きているという実感が、世界には今自分1人しかいないのではないかという錯覚を生んだ。 呑まれていく。ぼろぼろと砕けていく白黒の世界が、自分の中で崩れていった全てと重なり合った。 全ての元凶、ミクトランは倒した。それだけだ。後に残ったのは“無”だけだ。 生暖かかった空気が、自らの熱が急速に冷えていくのを感じる。生の実感もまた、共に失せていく。 頬を伝う涙が、止まらない。壊れてしまったと思った。 『ヴェイグ』 コアクリスタルの輝きが目に入って、彼は発生源を見る。 『これが我らに与えられた最大の罰だ。多くの選択を見失ってきた者達への、自分の心が与える罰なのだ』 ディムロスの淡々とした言葉にヴェイグは何も返さない。 これが、自分から自分へ送られた裁きだということはとっくに分かっていた。 たった18年ではあるけれども、今までの自分が積み上げてきたもの全てが、今の自分を否定する。 積み木や塔、砂の城は高く高く積み上げたのを最後に崩すからこそ、その崩壊の様は見事と言えるのだ。 例えそれが間違いであろうと、虚数ばかりのつぎはぎの砂城であろうと。 『しかし』 この場に流れる空気を途切れさせようとするかのように、ディムロスは強く発する。 『……いや、私もお前と同じ、咎の住民だ。お前と同じ人間の戯言だと、受け流してしまっても構わない。 昨日、お前と初めて出会ったばかりだが……私は、お前の全てが間違いだったとは思わん』 少し落ち着いた声にヴェイグは目の色を変えた。純粋な驚きが瞳に宿っていた。 『ヒトは過ちを犯すもの……お前も、私も、その1人だ。 だが、全てが間違いである人間など、居りはしまい。虚構であろうと、積み上げられてきたものに嘘はない。 ミクトランのあの言葉だけは、否定出来る』 ディムロスの言葉を吟味するかのように、少々の沈黙が2人を包み込んだ。 静かに揺れる心の水面が再び水平となって、ディムロスを置いた右手で涙を拭き取り、やっとヴェイグは微笑を浮かべる。 「ありがとう、ディムロス。だが、いいんだ」 そう言ってヴェイグは天井を見上げる。 「始めから間違っていた……その方が、余程諦めがつくんだ」 吹き抜けの天井はどこまでも遠く、天でありながら深淵へ続くように思わせる。 そうか、とディムロスは言って、彼は小さく頷いた。 自分の中から何かが抜けていくのを感じた。心の奥底で湧き上がる泉のようなものが枯れていくのを感じた―――― いや、存在そのものがなくなったと言えるかもしれない。 ヴェイグは手を広げ力を込めるも、もはや氷は具現されなかった。心がゼロになった何よりの証拠だった。 少し待ってくれ、と彼はのろのろと立ち上がり、始めに転移してきた位置に置いたサックの下へと向かう。 その歩は不安定であるのに確固とした足取りだった。 サックの紐を解き、するするという静かな音が耳を満たす。 全ての要素が、1歩、また1歩と何かに近付いていくのを感じさせた。 サックの中に手を突っ込み、目当ての物を取り出す。 ディムロスは彼を見て、自殺を行おうとしていた少年の姿を思い出したが、不思議と不安はなかった。 振り向いた彼が握っていたのは、小振りの曲刀だった。不意にディムロスは息を呑んでしまった。 「俺の力は、もう使えない。代わりの刃があってよかった」 施された意匠が自身とよく似ているのを見て、ディムロスは皮肉だな、と思う。 コアクリスタルの輝きは既になく、中央に青い結晶が填め込まれているが、ディムロスは結局恋人の宿った刃で幕を下ろされるのだ。 世界とは何たる皮肉な魔物だ。本当に、全ては決められた結末に向かうよう定められているのかもしれない。 その世界に、咎の住民たるディムロスは感謝した。 ヴェイグは既にディムロスへと近付いていた。終わりの時が近付いていた。 「ディムロス、今まですまなかった」 『構わん。ハロルドに振り回されるお前は中々面白かったぞ。 口の利き方は……そうだな、地獄というものがあるならゆっくりそこで講釈してやる。今やるには、些か……疲れた』 ふっと笑みが零れて、2人は小さく笑い合った。 「あんたがいなければ、俺はここまで来れなかった。ミクトランも倒せなかった。……ありがとう」 ああ、こうして礼を言われるからこそ、例え間違いだらけの積み重ねであろうと、否定されようと、 人との出会いや交わした言葉は嘘ではないのだ。 一抹の満足感すら覚えていることにディムロスは罪悪感を覚えた。 全てが消え失せた今となっては小さな言葉1つでも心を暖める。 『――――さらばだ、ヴェイグ』 地に置かれたディムロスのコアに刃が振り落とされる。 矛先が結晶に突き刺さり、亀裂を生み出し、粉々に砕け散った。宙に舞う欠片が光に煌いて、やがて見えなくなっていった。 これで、本当に1人になった。世界にただ自分しかいない。 ヴェイグはディムロスを砕いた曲刀の柄をこつりと額に当てる。 自分が誤っているのか。世界が誤っているのか。どちらが真実なのかは最早分からない。 ただ、この2つが行き着く先は同じ――どちらが誤っていようが、映し出されるモノは“間違い”なのだ。 人が世界を生み出すのか。世界に人が生まれるのか。 人が狂気に堕ちたのか。世界が狂気を与えたのか。 平行線の論議など、永遠に終わらない。だから、全てを終わらせるのだ。自らの手で。 間違いだけの世界に、何の価値があろうか。 両目を閉じ、震える息が腕の中で零れる。 死ぬことは、怖くない。この結末はずっと頭の中で思い描いてきていた。 これで血塗られた惨劇の全てが終わる。憎しみの連鎖は断たれ、もう誰も傷付かないで済む。 崩れた過去の自分が遠く離れていく。光が闇の奥へ消えて、小さく小さくなっていく。 カイル――母親には会えただろうか。 ティトレイ――お前が見てきたものが見れた気がする。 クレア――――すまない。俺は、戻れない。 一度刀剣を離し、空を見上げた。ゆっくりと息を吐くのと同時に、全身の力がすうっと抜けていく。 視線を戻すと刀身に自分の顔が映った。眼球のない左目が、その奥に見える無が自分を見つめる。 刃が傾いて、反射している顔が消える間際に表情は安らいだ。 切先は、紛うことなく心臓へ―――――― 突然過ぎる覚醒だった。 目の前に景色を叩きつけられたような、ふと我に返った時に光景が見えてくるようなものだった。 薄暗いホール、冷えた空気、血の臭い、ミクトランの死体。 それを前にして、彼は困惑どころか状況が把握できずにいた。 死を経たはずの頭は真っ白で、目の前の風景が一体どんな意味を持っているのかすら、分からなかった。 ただ、勝手に右手だけが動き、頬があると思われる位置に触れる。 手套の向こう側でも、柔らかくすべらかな肌の感触と、ヒトが持つ36度の体温を感じた。 それを確かめるように、何度も何度も指先を動かす。 「……生きている……?」 不意に飛び出た自分の声に、彼ははっとして手を身体に遣る。 剣を刺した筈の胸元に触れ、走った痛みに顔を歪める。 しかし、胸を見ても心臓を刺した傷はなく、ミトスとの戦いで負った火傷だけがそこにあるのだ。 右手の曲刀に目を移しても、血に塗れた気配すらない。 「ディムロス?」 無意識に相棒の――相棒だった剣の名を呼ぶ。 反応が来る前にディムロスの方を向くも、コアクリスタルは砕け、僅かに残った残骸はくすんでいる。 反応はない。 訳が分からなかった。確かに胸部に剣を突き刺した。それなのに傷1つなく、こうして生きている。 ふっと、ホールを照らしていたロウソクの炎が消え、辺りは暗闇に包まれる。 混乱の中では風の流れで消えたそれも異常な事柄だと思えた。 誰も、彼の問いに答えてくれる者はいない。静寂がしばらく続いて、彼は冷静さを取り戻した。 こんなことが起きたところで、やるべきことは変わらない。 きっと幻覚でも見ていたのだろうと、これから死ぬ自分への、死の恐怖を和らげようとした深層心理の 愉快なサービスだと、馬鹿らしいことを考えた。 笑顔を作ろうとして、笑えなかった。水を思い切りかけられたように気は沈んでいた。 首を振って頭の中にわだかまる靄がかったものを振り払い、もう1度剣を強く握る。 彼は迷いなく首下を剣で貫いた。 突然過ぎる覚醒だった。 目の前に景色を叩きつけられたような、ふと我に返った時に光景が見えてくるようなものだった。 薄暗いホール、冷えた空気、血の臭い、ミクトランの死体。 それを前にして、彼は今度こそ困惑を見せた。 「どうして……?」 彼は座り込んだまま、目の前に広がる光景の異様さにそう呟くしかなかった。 首の真中に触れると、やはり痛みを感じる。しかし、やはりそれは首を刺した傷の痛みではないのだ。 首輪爆破を防いだ時にできた火傷だった。 無言のままディムロスの方を向くも、コアクリスタルは砕け、僅かに残った残骸はくすんでいる。 「誰か……誰かいるのか?」 姿の見えぬ誰かが傷を癒してくれているのかもしれない、今度はそんな考えが浮かんだ。 考えられないのが9割であったが、こんな風にもなると考えたくもなる。そうとしか考えられなかった。 よろめきながら立ち上がり、辺りを見回す内に再びロウソクの炎が消え、辺りは暗闇に包まれる。 他人の姿どころか、自分の姿さえ把握できるのか怪しい。 探すな、と暗に示しているのだろうか。どんな意図があって2回も同じことをしたかは分からない。 この期に及んでもまだ生きろとでも言うのか。 ――逃げても、這い蹲ってでも生きろ。確かにそう言った奴はいる。 だが、この何もない世界で生きていくには辛く――――生きられるほど、強くはない。 死を選ぶ人間が一体何を見てきたのか。このモノクロームの世界に、どんな光を見出せるのだろう。 闇の中で、彼は額に剣を当てる。眉間を貫けば流石に治療もできないだろう。躊躇いはない。 額に触れる刃が冷たい。これが死の感触だ。 彼は勢いよく眉間に剣を突き刺した。 突然すぎる覚醒だった。 目の前に景色を叩きつけられたような、ふと我に返った時に光景が見えてくるような……。 彼は唖然とした。何故、この光景を3度も見ているのか。 鼻に流れてくる臭いも同じ。肌に刺す冷気の感触も同じ。何も変わってなどいなかった。 額に触れるも、今度は痛みすらない。刀身を鏡代わりにして顔を映すも、見えるのは左の眼窩がごろりと開いた情けない表情だった。 吐き気が催されるのを感じた。何故かは、自分でもよく分からない。 ただ、自分の肉体が自然と違和感や恐怖を覚えているのだと思った。 困惑を通り越して、この状況が悪意のある、いや、異常なものだと思った。 幻覚でも、誰かが癒しているのでもない。第六感がそう告げていた。 思わず縋るようにディムロスの方を向くも、コアクリスタルは砕け……何となく、予想はついていた。 次は炎が消える。これも何となく分かった。考えるのと同時にロウソクの炎が消え、辺りは暗闇に包まれる。 ヴェイグは、腿に刃を入れた。肉が裂けていき、抑えるも叫びを上げた。 深くぱっくりと割れただろうことを激痛で理解して、もう1度傷口へ刃を刺し込んだ。 痛みで手を離し中断したい衝動に駆られるも、それを耐え刃を更に奥へ奥へと沈めていく。身体がびくびくと震える。 痛い。口からひいひいと息が漏れて、何も見えない中に確かな人の感触を感じさせる。 痛い。これが生きている証拠だ。脂汗と涙が顔に浮かぶ。 その内、刀身が骨に当った。それにも彼は刃を入れ、鋸のようにごりごりと削り取っていく。 合間に刃が肉に触れて、上下運動に巻き込まれて細切れになっていく。 骨も真っ二つになって、彼は思い切り刃を重力に任せて進めた。皮膚が裂けていく感触がして、足先の重みが失せていく。 刃がつっかえを失くして、そして彼は大量の汗が滲んだ柄を離し、仰向けに倒れ込んだ。 熱い。体内の熱が断たれた足から一気に放出されているように、熱が一箇所に集中している。 全身の血潮が外へと流れ出ていく。脱力感が襲い掛かってきて、痛みで冴えた目すら、重く閉じたくなってきてしまう。 こうしてまで痛みを感じなければ、それは死ではないということだろうか。 再び曲刀を握って、彼は腹部に刃を突き立てる。古傷が開いていく。肉を裂いて内臓を抉る。 口から血が溢れ出て、目の前の闇が更にフィードアウトしていった。 とつ然すぎる覚せいだった。 彼はすぐさま自分の足を見て、息を呑み愕然とした。 何で、どうして――繋がっている。 遅れて腹部を見る。傷はなく、脇に凍結された傷跡だけが残っていた。 そして、何よりの異常に気付く。自分は仰向けになっていた筈なのに、何故――座っている? 刃に血の跡はなく、見えるものは何も変わらず、ディムロスの応答はなく、まるで―――― 身体の振動を隠すように、叫びにも似たそれを上げながら、彼は足に剣を振り落とす。 次は別の足へ、肩へ、腹へ、目へ、胸へ――どうして、どうして死なない。死ねない。 全身から血が流れていく。それでも、彼は手を休めない。刺しても刺しても斬っても斬っても無事な肌へ。死ねない。 殺せ。殺せ。誰か俺を殺してくれ。 飛び散る赤い飛沫が消えた炎の闇へと溶けた。 死にたい。死にたい。死にたい死にたい死にたい死なせてくれ。 どれだけ傷付ければ死ねる? 何が足りない? 結局、諦めは逃避でしかないのか? 闇の中でただ彼の声と水音だけが木霊する。 とつぜんすぎるかくせいだった。 彼は、笑うしかなかった。 決まりとなったボディチェックも、せずとも結果は既に決まっていた。全てを埋め尽くしてしまう痛みもないのに、どこに傷がある? 乾いた笑い声はホールに響き、まるで自分のではなく、他の誰かが嗤っているようにすら聞こえてきた。 悟ってしまった。これは、幻覚でも何でもない。 ホールを照らしていたロウソクの炎が消え、辺りは暗闇に包まれる。 それから、時間の感覚は失われた。もうどれ位の時間が経ったのかも知らない。 食糧として残っていた果物も早々に叩き潰し、残っていた水のボトルも砕いた。 しばらくは甘い果物の香りが残っていたが、いつしか空気にさらわれ消えていった。 唯一残った臭いは――ミクトランの腐臭だけだった。それも慣れてしまえば何の興味も出ない代物だった。 空腹と渇きはある。水と食料が差し出されれば、咽から手が出る勢いで貪りつくだろう。 けれど、当然差し出す人間はいない。そして探しに行く気力もない。肉体的にも精神的にも、1歩踏み出す気概は乏しかった。 頬も痩けただろうか。筋肉も衰えたかもしれない。排泄も止まった。既に、腹の音が鳴る力すらない。 目はとうに慣れていたが、辺りが暗くて良かったと思った。死体が見えれば腐肉だろうと喰らい付いていたかもしれない。 そう理由付けて、彼は必死に死を待っていた。 指先を動かすことすら重く気だるい中だった。 久方振りの光に、彼は目を眩ませた。そしてぼんやりと霞敷いた視界が彼の視力を奪っていた。 しかし、初めての出来事に彼は力を振り絞って大きく目を開いた。 はっきりとしない視野に映るのは――白い光の中の金と薄めの青、そして縁取る輪郭線だけだった。 ふと、似たようなことがあったのを思い出す。あれは……そう、身体が石になった時だ。 「何故ですか?」 光が、声を出して問い掛けてきた。彼は必死に、弱々しくも微笑を作った。 「大丈夫、クレア……俺の手は、もう汚れないから……俺はもう、こんなこと……望んでいないから……」 か細い声で、彼は前後の脈略もなく答えた。 「いいえ、貴方は、死を望んでいます」 「俺が望んだものは、こんなものじゃないから……」 「いいえ、貴方は、死を望んでいます。貴方は、死を望んでいます……」 とつぜんすぎるかくせいだった―――― 最早彼の表情には何も浮かんでいない。この景色が浮かんでくるのも、既に想像がついていた。 薄暗いホール、冷えた空気、血の臭い、ミクトランの死体。 サックの下へと近付き、中身を確認する――そのままの果物に、水の入ったボトル。 思わず手を伸ばそうとして、とっくに空腹感も渇きもないことに気が付いた。 身体が跳ねる。こみ上げる笑いを必死に抑えて、押し殺された声だけが出た。 何度も何度も繰り返すだけ。永遠の死を以て永遠の生を続ける。 全てを終わらせると決めた筈なのに、終わらせられない。誰がこうしたのか、残ったのは“無”だけだ。 笑いが押し切って口から飛び出る。四つん這いになり、頭を床に埋め、身体を丸め、両手を頭に遣り、解けた髪をぐしゃりと握る。 死ねない。死ねない。死ねない。 自分はこのままこうやって刃を心臓に突き立てるなり餓死するなりを繰り返して生きていく。 何の意味もない生。無に覆われた中で時間を使うだけの生。いや、生とすら呼べるのだろうか? 後に残された無、それを永遠に味わい続ける罰。 何てことだろう。1番自分が欲していたものなのに、それがとてつもなくおぞましい。 死ねない。死ねない。死ねない。 俯き影に覆われる顔の中にあるのは、笑みと見開いた目と声にならない声。 このまま狂ってしまうなり廃人になってしまう方が楽だと思えた。 そうすればもう、何も見ないで済む。永遠に死んで永遠に生きても、何も感じずに済む。 逃げだろうと何でもいい。 それを許さないなら、誰か俺を死なせてくれ。 虚ろな笑い声がホールに響く。聞けば聞くほど、世界が遠ざかっていく。 刹那――――甘い香りが鼻をくすぐった。 ぴたりと笑い声が止まる。口内を、よく分からないものを駆け巡った。甘ったるい、口で溶けていくような―――― どうして、どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろう。 崩れてしまった自分が告げる。しかし、何なのかは分からない。 “どうでもいい味”はすぐに消え失せ姿を隠してしまっていた。 ホールを照らしていたロウソクの炎が消え、辺りは暗闇に包まれる。 闇の中でとても悲痛な、それごと引き裂くかのような絶叫が響き渡った。 [who is good or evil?] 『ヴェイグ……ヴェイグ!!』 手に握られたソーディアンが彼の名を呼ぶ。己の位置、即ち彼の位置はぴくりとも動かない。 こつこつと靴を鳴らす音が接近してくる。1つ1つの音が軽快で、引き摺るような、そんな音は聞き受けられない。 足音が止まって、ソーディアンは“見上げる”。そこには、 「残念だったな、ディムロス」 長く細やかな金髪を1つに結い、白い衣服を身に纏った王が佇んでいた。まともな傷もない、勝ち誇ったような笑みを浮かべて。 後光を受けて窺えぬ表情が、一瞬光が揺らめいて見通す。 口元を一筋の血が伝っていた。 「だが、最後の一撃は……まともに喰らえば私すら危うかった」 焦げた衣に、真中を走る1本の裂け目。確かに、ヴェイグの秘奥義インブレイスエンドは発動した。 しかし、届かなかった。最後の最後で、チェックメイトには至らなかった。 そうでなければ、どうして天上王が前に立っている? 『貴様ッ……何をしたッ!?』 上擦った声で、傷1つないコアクリスタルを輝かせソーディアン・ディムロスは叫んだ。 「何をした? 私は、ただ奴の願いを叶えただけだよ」 『願いを、叶えただと?』 「そうだ。私はこのゲームの主催者として公約を果たしたのだよ」 ぎらり、とミクトランは笑う。 「但し、夢としてだがな」 その笑みに生理的嫌悪感をディムロスは覚えた。 ヴェイグは、ミクトランの前で地に臥せっている。ディムロスを握ったまま。 寝顔は本当に普通に眠っているように見えるのに、それでも、その瞼の裏に広がる悪意は計り知れない。 『ふざけるな……! 夢だと!?』 「何を言う。夢だと知覚しなければ現世と夢に一体何の違いがある?」 ミクトランは王の風格そのままに、ディムロスを見下げたまま言う。 「神の化身は1度、幸福の世界として夢の中の世界を選んだよ。聖女でも為しえた事象を、神の宿ったレンズで行えないと思うか?」 『神の宿ったレンズ……貴様、まさか、神の眼を……!!』 「物事は人間が思うより1歩先に進んでいるものだ。貴様の考えなど到底浅はかだよ」 くく、と王は笑う。 「奴だけが誤った像を結んでいるのだよ。だが、よいではないか。 願いの叶う素晴らしい世界へ行けるというなら、奴の言う今の間違った世界などかなぐり捨てていけるのだからな。 他の54人が野垂れ死んでいった中で優勝者にのみ許された権利だ。そこに一体何の間違いがあるッ!?」 両手を広げる王に、ディムロスは口をつぐんだ。抑えられた息だけが漏れる。 もし夢の世界がヴェイグの願う幸福の世界だとするならば、それは幸福でも何でもない。 延々と全てを終わらせる、その繰り返し。即ち、逆接的な永遠の生だ。 ミクトランはヴェイグの願いを知った上で夢へと連れ込ませたのか。怒りを通り越して憤死しそうなほどの血が込み上げてくる。 『ヴェイグ、戻れ……戻ってくるんだ……ヴェイグ!!』 「無駄だ。奴は既に神の胎内で眠っている」 少しも動かぬヴェイグに叫びかけるも、すぐさま王に一蹴される。 「マスターが消えれば貴様は何も出来ない。所詮は道具に過ぎないということか」 そう言って、ミクトランは納めていたソーディアンを取り出す。切先は無論ディムロスへと向けられている。 それを見て、ディムロスは目を見開き驚愕した。 失念していた。そう、このソーディアンは今や、ミクトランの所持品となっていた。5本だけではないのだ。 ソーディアンの中で唯一黒い、異質な刃。 一振りで禍々しい悪魔の翼を思わせるかのような、邪気さえ溢れ出ていると思える意匠。 その作りは、確かに今の混沌とした世界にぴたりと符合していた。 名を、ソーディアン・ベルセリオス。軍師カーレル・ベルセリオスが用い、妹のハロルドが人格投射した、6本の中でも特別な存在。 しかし、ベルセリオスのコアもまた、他の2本と同じように光はない。反応する様子すらなかった。 『何故、それを』 負け惜しみを吐くかのようにディムロスはたどたどしく言う。 「愚問だな。貴様は覚えているように“されている”のではないか?」 嗤うミクトランに、ディムロスは発せられた言葉の意味を咀嚼していた。 今の言葉には明らかな違和感と、邪念がある。 混乱が伝わったのか、一度はミクトランは剣を引いた。 「そうだ。先程、貴様が忘れた些細なことを教えてやろう。 私は、現実と夢は知覚できなければ違いはないと言った。そして、ソーディアンの人格など、結局は情報の集合体でしかない。 ならば――――」 「――――自分の記憶が唯のデータでしかない、と疑ったことはないか?」 『どういう、ことだ』 「問うているのはこちらだ。貴様は何故2つの記憶を持っている? 同じ時間、同じ場所、しかし中身は異なるなどという奇妙な記憶を、貴様は何故疑わず矛盾なく受け入れている?」 ディムロスは何も言わない。立てられた仮定のピースが少しずつ表に裏返っていく。 人は1秒1秒過ぎ行く現在を1つしか覚えられない筈なのだ。 「結論を言う。貴様の記憶は全て、纏めて後付けされたデータでしかない。貴様は何もない状態から生まれた幻影でしかないのだよ」 ぐらり、と視界が揺らぐ。 スタンとの記憶も、カイルとの記憶も、積み上げられた輝かしき記憶ではなく唯の作られたデータ。 それだけで楽しかった日々も何もかもが色褪せていってしまう。 ディムロス・ティンバーという一個人が経験した出来事ではなく、“経験したと設定された”出来事でしか、それはないのだから。 2つの記憶など、それこそ情報集合体という単位でしか為し得ない事象だ。 『アトワイトも、シャルティエも、クレメンテもイクティノスも、その手のベルセリオスも』 「ああ、同様だ。貴様らは今この2本の状態にデータを書き加えたに過ぎない存在だよ。さて」 向けられていた切先が引き上げられていく。 「冥土の土産もここまでだ。絶望して死ね。貴様らソーディアンチームは“負けた”のだ」 にや、と笑うミクトランをディムロスは力なく見る。目の前へと迫る矛先。 傍に立つ男は、確かに天上王ミクトランの姿を象っている。 しかし、ディムロスは違和感を禁じ得ない。自分の記憶がバックアップでしかないと理解してから更に感じる。 異なった見地、ディムロス・ティンバーではない名もなき誰かが王を見つめ、固まり尽くした先入観を解していく。 この男はミクトランに間違いない。だが、そのミクトランのイメージは“後付けされたデータ”の中の存在でしかない。 ならば、今目の前に立っている男は、真に“記憶の中にある”天上王なのか? 『……お前は、誰だ……?』 答を聞くことも叶わず、コアクリスタルは砕けて散っていった。 最後の1人は夢によって神の下へ導かれ、異空間の安定を保っていた最後のソーディアンは砕かれた。 バトル・ロワイアルに招かれ、このホールに――ホールに似せられたセットに――いた筈の55人は、今は何人たりとも存在しない。 がらんと空いたホールをぐるりと眺め、ミクトランは天を見上げた。 ぱちぱちと炎の弾ける音だけが鼓膜で響く。何の音もない空間に、王は自分の笑い声を満たしたくなった。 「くくっ……はは、ははははっははははははは!!!」 気高き勝利の笑いだった。深く酔い痴れた、この上なく寒気のする笑いだった。 笑声の余韻がハウリングとして残る中、こつ、こつと、全ての屍を踏み越えていくように歩む。 高らかに靴は鳴り、何度も何度も自分を包み込む響きは王を迎える民衆の歓声のようだった。 音は、高く高く天へと向かっていく。 悪夢の3日間の始まりとなったホールは、遂に無人となった。 王は、大きく作られた両開きの扉の前に立っていた。 まだ外であるというのに、粘りつくような絡みつくような電気が全身に纏わりつく。 横にはこじんまりとしたセキュリティシステムが1つ。 彼は繊細な指、もとい手をパネルの上へと遣り、点っていた光が赤から緑に変わるのを確認する。 静かに、厳かに扉が開いていく。無色の光が満ちて、一気に外へ溢れ出てくるのが分かる。彼の口元が厭らしく上がった。 光の先で、部屋中に張り巡らされた配線は鼓動を続けている。 連結と分岐を繰り返し、最終的な十数本の先は巨大なレンズが安置された台座へと繋がっていた。 結晶は何の力を受けることなく自転し、延々と光を放ち続けている。 中心が、そこが心臓であるかのように光の律動を繰り返す。ゆっくりとしたそれは眠る子供の呼吸のリズムだった。 粘性の帯びた空間の中を、王は、ミクトランは頭に響く唸りももろともせずに踏み分けていく。 神の御許まで辿り着いて、彼は懐からベルセリオスを取り出した。 このバトル・ロワイアルも、運営にベルセリオスの情報的支援がなければ為し得なかった。 例え宿っているのが自分のAIであろうと、神の御姿を見せるのもまた一興だろう。 神の宿る6メートル規格のレンズを見上げる。 「54の祈りと1の願いは集った。万能の変換機は完成した! 精霊王も、セイファートもネレイドも大いなる滄我も弱った。神の断片も本体へと戻った。私を遮る物はないッ!!」 声高々と宣誓する王は笑う。 万色の絵の具と万能の変換機を手にした彼に叶わぬものなど何もなかった。 ディムロスにスタンとカイルの時代を与えた王は、つまりは自らの結末を知っている。 彼は知っているのだ。自らが、正しき歴史の障害となる外れた存在であることを。 「何故私が歴史の敗者とならねばならぬ……私は天上王ミクトラン、全てを手中に納める者ッ!!」 勢いよく両手を広げ、彼は叫ぶ。 降臨する神を受け止めるかのようなそれは、子を受け取ろうとするような姿であった。 神の親、然らば彼もまた神。 目前に白い蛍光色が集っていき、辺りの色彩が失われていく。 どんどんと光は肥大していき、広大な部屋1つすら埋め尽くしてしまいそうになる。 王、否、現人神の身体を呑み、白1色が多い尽くす刹那。彼は恍惚を前に見たくとも見れなかった。 正何面体かを数えるのも億劫になってしまう結晶の面1つ1つ、その隅に――右手のない桃髪の女性が映り込んでいることを。 「神よ!! 私を理想の世界へ――――――――」 全てを光が呑み込む――――今こそ神の降臨の刻。 残されたのは、ただ回転を続ける神の眼だけ。 その後、彼らの行方を知る者は、誰もいなかった。 [a little wish in the despair] 季節が巡り、冬が訪れた山麓の村に雪が降る。 冬になればノースタリアに近いこの村は毎年大雪が降り、人々は雪かきに勤しむ。 この村の家々は対策として一般的な民家よりも屋根を斜めに建てているも、それでも雪は積もってしまうからだ。 雪を掻く重い音と、屋根から一気に雪が落ちる音を聞きながら、彼女は外を眺めていた。 ざっ、ざっ……ごうっ……どしゃ。 景色を切り取る窓からも、時折崩れた雪がどうっと落ちてくる。今は、彼女の父が雪降ろしをしていた。 母親もちょうど、今は集会所に出掛けている。 暖炉の薪が弾ける音の中、パイを焼く甘い香りが部屋を漂っていた。これも、何度目のことだろうか。 彼女の心は――――スールズの冬の寒さのように、冷えていた。 ずっと聞こえていた雪の降ろされる音がなくなったのに気が付いた。その代わりに、ドアの開く音がした。 防寒具を身に付けながらも、雪が全身に降り積もり、顔を赤くした父親が立っていた。 「クレア、お客さんが来てるぞ」 手で雪を払いながら言い、父は振り返った。背丈に隠れていた少女が、おずおずと前に歩み出る。 同じように頬を赤くし、白い息が声と一緒に零れ出た。 「お久し振りです、クレアさん」 胸に手を当てた少女、アニーが微笑んだ。 ハーブティーを入れ、アニーは両手でカップを持ち手を温めるようにしていた。 再び聞こえ始めた雪降ろしの音を聞きながら、クレアもアニーも外を眺めていた。 2人とも、そうする理由があったのかもしれない。人は思いを馳せる時、大抵窓の外を見つめる。 「ヴェイグさん達がいなくなって、もう4ヶ月経つんですね……」 アニーが顔を動かさぬまま呟いた。彼女は正面に向き直って、少女の横顔を見た。 まだ幼さの残るあどけない顔立ちに、幾分かの影が落ちていた。 もうそんなに経ったのね、と答えて、アニーも正面を向く。 「ティトレイさんもまだ戻ってきてないそうです。この前ヒルダさんの所に行ったら、やっぱり寂しそうでした。 言葉はぶっきらぼうでしたけど。……ポプラさんも?」 「ええ。おばさんも、まだ行方不明のまま」 言葉を飲み込むように紅茶に口をつける。この話題を出す度に、重いものが胸に圧しかかってくる。 ハーブティーの爽やかな香りが、そんな気持ちを何とか落ち着かせてくれていた。 4ヶ月前、何の前触れもなく、ヴェイグがクレア達家族の前から立ち去った。 置き手紙もなく、近所に住むポプラにも話を聞こうと思って家に行けば、そのポプラもいなかった。 1年前のラドラスの落日、そして数ヶ月前に彼女、クレア・ベネットが王の盾に浚われるといった大事件はあったけれども、 基本的に何もない、平和なスールズにとっては2人の失踪だけでも事件となった。 幼馴染みのスティーブもモニカも、何も知らないと言っていた。 瞬く間に噂は広がり、何か事件に巻き込まれたんじゃないか、実は2人で駆け落ちしたんじゃないかと、諸々の憶説が飛び交った。 数日して、ペトナジャンカのセレーナから手紙が届いた。「ティトレイが遊びに行っていないか」と。 彼女は気になって思わず馬車でペトナジャンカまで行き、セレーナに聞いてみれば、 ヴェイグ達がいなくなったのと同じ日に弟のティトレイが失踪したという。 彼女の胸に、嫌な予感が過ぎった。 それから4ヶ月、何の連絡もない。 「ユージーンとマオは世界を旅しているから、何かヴェイグさん達の情報を得たら教えてくれると言ってくれました。 でも、今のところはまだ……」 カップを置かず、両手で抱えたままアニーは萌黄色の水面を見つめていた。 見つめていたけれど、実際見てはいないだろう。悲しく沈んだ自分の顔を誰が望んで見るだろうか。 ヴェイグも、ティトレイも、家族の何の連絡もなしにいなくなる筈がない。彼女にはその思いがあった。 だが、その2人が数ヶ月何も知らせないという事実が、不安の影を落とす。 ざっ、ざっ……ごうっ……どしゃ。 沈黙の中、雪の音だけが厭に聞こえてきた。気付けば、顔は再び新雪の降る窓を向いていた。 手持ちぶさたげに彼女は紅茶をもう1口飲む。 2人の間に横たわる沈黙は重々しく、棘を持って2人の胸を突き刺していた。 ざっ、ざっ……ごうっ……どしゃ。 「そういえば、クレアさん……お菓子を焼いているんですか?」 「え?」 静寂を破るアニーの上擦った言葉で、クレアは一瞬きょとんとし、すぐさまはっとした。香草の匂いの中に甘い香りが混じる。 「いけない、焦げちゃう!」 ぱっと立ち上がり、キッチンの焼き窯の中から慌ててパイを取り出そうとして、ミトンを付け忘れて慌てながら嵌める。 改めて取り出した時には、さくさくと焼き上がった生地が所々黒くなってしまっていた。 「焼いていたのを忘れてた……どうしましょう」 「大丈夫ですよ」 傍に寄っていたアニーがパイを指す。 「ほら、こことここ、ちょうどどこも焦げていませんし。それに、凄くいい匂いです」 「アニー」 「せっかく作ったピーチパイです。もったいないですよ」 微笑みかける少女に、彼女もつられて笑い頷いた。 焦げ目のない部分を上手く切り分け、一切れずつ皿に分け、今まで座っていたテーブルへと持って行く。 アニーは一口運ぶと、ぱっと顔を明るくする。 「美味しいです、クレアさん」 「あの後、おばさんに作り方を習ったの。それでもまだまだ敵わないけどね」 彼女も一口ピーチパイを含んだ。甘く、まろやかな味が口の中で溶けていく。 アニーは既に半分ほど食べてしまっていた。 含んでいた分を飲み込んで、小さいフォークを持ったまま、少女はクレアの方を向く。 「クレアさんは、やっぱり強い人ですね」 「え?」 「前に、ヴェイグさんがいなくなってしまった後に来た時も、クレアさんはピーチパイを焼いてました」 こつん、とフォークを置く音が鮮明に聞こえるほどに、彼女の頭ははっきりとしていた。 「クレアさんは、ピーチパイを焼いてヴェイグさんを待っているんですね」 思いがけないアニーの言葉に、クレアは何も考えられず、相手の顔をただ見つめるしかなかった。 可愛らしい顔立ちに浮かんだ微笑はどこか真剣さが混ざっていた。 その瞳に見抜かれ、少しして彼女は首を横に振る。 「あなたが思うほど、私は強くないわ。ピーチパイを焼くのも、ただ寂しさを紛らわせようとしているだけなのかもしれない……それに」 「それに?」 アニーの問い掛けに、彼女もフォークを置いて言う。 「もしヴェイグが戻ってこなかったら、この味は思い出す度に辛くなってしまうものかもしれない。それは、アニーも同じ」 私は、他人と寂しさを共有しようとしているだけなのかもしない、と彼女は思った。 ピーチパイの味を思い出して辛くさせるように、罪のようなものを他の人に押し付けているのかもしれなかった。 少女は、少し冷めた紅茶をすすって、クレアにもう1度微笑んだ。 「いいえ。私は、クレアさんのピーチパイの味を思い出す度に、強くなれます」 その言葉に彼女の目は大きく見開いた。 「不安な気持ちも分かります。私も……不安で押し潰されそうでされそうで堪りません。 でも私は、クレアさんの行為がきっと、心の弱さではなく強さから来るものだと信じています。 本当は、ヴェイグさんは戻ってくるって、心の奥底で信じているんだと思ってます。 だから私も、クレアさんの姿を思い出して、頑張ろうって思えるんです」 横槍を入れられぬよう、捲くし立てて言ったアニーは、一拍置いて「唯の独り善がりかもしれませんけど」と付け加えた。 彼女は、自然と首を振っていた。それを見て、アニーは組んだ手を胸に置いた。 「クレアさん。きっと、きっとヴェイグさんは戻ってきます」 そうして、クレアは気付いた。アニーは、自分自身に言い聞かせているのだ。 不安で一杯な気持ちを精一杯隠すように、ヴェイグは必ず戻ってくると、そう心の中で繰り返しているのだ。 目の奥が熱くなる。 私がしっかりしないでどうする。家族の帰りを待つのは、家に残る家族の役割なのに。 「ありがとう、アニー。そうね……待たなきゃ」 帰ってきて、安心して「ただいま」って言えるようにするのは、家族の役割なのに。 「私が、私が待っててあげなきゃ、ね」 目頭を手でこすって、潤んだ目を見せないように、それでもしっかりと前を向く。 「さ、食べちゃいましょう? せっかくのピーチパイ、だものね」 「……はい!」 ピーチパイを残さず食べて、少し話をした後、アニーは雪の中の馬車で帰っていった。 もう少し遅れてしまうと、ミナールから出るバルカ行きの船に間に合わなくなってしまうらしい。 泊まったら、とクレアは提案したが、明日は医院での仕事もあるので、と小さな医師は断った。 アニー曰く、心のケアも医師の仕事らしい。自分を心配してわざわざ来てくれたのだろうか。 だが、同時に心のケアをする側にも、癒す人間が必要なのだ。 アニーも不安で胸が張り裂けそうだったのかもしれない。結果としてアニーの心も軽くなったのなら、それで良かったと思う。 今度はピーチパイの作り方を教えてもらいに来ます、と笑いながら言っていたので、逆に私がバルカに行くわ、と答えた。 最後に、アニーは「ヴェイグさんがクレアさん1人を残す筈がない」と言っていた。 どうして、ヴェイグは私達の前から去ったのだろう。 何か理由があったのか、それとも事故や事件に巻き込まれたのか。彼女は考えるも、答えてくれる人はいなかった。 もう1度、不安という負の感情が手を伸ばしてきた。けれども、クレアは大きく頭を振って手を払った。 アニーも帰りを信じている。自分が挫けてはいけない。 ヴェイグがいつ戻ってきてもいいように、私はピーチパイを、彼の好物を作りながら待ち続けよう。 沢山食べてもらって、美味しいと硬い顔を笑わせてあげよう。 雪が降る。今年の冬も寒さが厳しそうだ。心の炎に薪をくべて、願いながら彼女は待つ。 空から白く降る結晶を、彼の力を思い出させるそれを見上げながら、彼女は呟いた。 「ヴェイグ……私、信じてるからね……」 甘く漂っていた残り香が雪の中に消えていき、残った悲しみだけが村を漂っていた。
https://w.atwiki.jp/jhs-rowa/pages/143.html
君に届け(I for you) ◆j1I31zelYA 神崎麗美から、菊地善人に。 越前リョーマから、バロウ・エシャロットに。 秋瀬或から、我妻由乃に。 高坂王子から、天野雪輝に。 天野雪輝から、我妻由乃に。 碇シンジから、綾波レイに。 そして。 ×××から、越前リョーマに。 × × × 「菊地さん、久しぶりっス」 とことこ、と。 茶髪の少年から菊地たちをかばうような位置取りに歩みを進めると、試合前のスポーツマンよろしくぺこりと一礼。 「神崎さんのこと、間に合わなくてすいません」 「それはいい。むしろ助かった……もっとも、状況はまだヤバいけどな」 「みたいっすね」 後は任せろと言わんばかりに、射るような眼差しを少年――バロウ・エシャロットに向ける。 そんな越前に続いて現れたのは、合流する予定だった二人のもう一人――綾波レイと、菊地には初対面となる少年。 「どういう状況? 杉浦さんは?」 「神崎……マジかよぉ……」 どうやら神崎とは面識があったらしく、沈痛な視線をその遺体に向けている。 本来ならば再会を喜び合いたいところだが、あいにくと正面にいる敵は、既に何人もの人間を殺している異能者だった。 「杉浦たちはこの近くに待たせてる。そこにアイツと戦える仲間もいる。 いったんそこまで走るぞ。あのバロウはヤバ――」 「させると思ったの?」 冷淡な声が菊地の望みを断つ。 同時に、バロウの掲げた砲身から巨大な鉛玉が飛び出した。 ドン、と重たい破裂音を後にひいて、一メートルほどの鉛玉が四人を蹴散らさんと突進する。 「…………!」 「クソッ…」 「う、腕から大砲ぉ!?」 激突までのわずかな時間。 菊地は歯噛みをし、初めて目の当たりにする高坂と綾波になすすべはなかった。 しかし、 「高坂さん、しばらく借りるよ」 越前は、いつの間にかその左手に金属バットを手にしていた。 「ふっ!」 そのフォームは、テニスでリターンエースを取る時のそれ。 左腕が輝きを放ち、巨大な弾丸をバットの芯でとらえ、返す。 次の瞬間。バロウの立っていたすぐ手前で、地面の破砕音が響いていた。 「…………え?」 ギリギリの位置で“鉄”が地面と爆ぜ、風圧に気圧されながらバロウが目を見開く。 「……ってー。やっぱ“百錬自得の極み”が無いとキツイね」 「越前……お前『テニス部』じゃなかったっけ?」 「同感だけど今は突っ込むな! 今のうちに仲間ってのを呼んでこい!」 今だけは高坂が菊地を急き立て、近くにいるらしい仲間の元へ急がせようとする。 バケモノじみた能力には怖じ気づきかけたけれど、マリリンと戦った時のように『Neo高坂KING日記』を使って越前をサポートすれば、時間かせぎぐらいはできるはずだと思った。 しかし、動揺から脱したバロウはそれを許さない。 “鉄”の衝撃で尻もちをつきながらも、右手をかざして唱えた。 「“旅人(ガリバー)”!」 その声を起点とするように、一瞬で地面を光る網目模様が駆け、 「のわっ!」 ――網目の一角、リョーマをのぞく三人が立っていた地点を取り囲んで“壁”が生えた。 時間にしてほんの0.5秒足らずで、“蓋のついた壁”は“箱”として閉じる。 菊地たち三人は、それだけで“箱”の中に隔離されてしまった。 「菊地さん!?」 リョーマは慌てて壁へと駆けより叩いたが、“箱”は分厚い石材か何かのように、内側の一切をシャットアウトする。 「心配しなくていいよ。ボクの神器なら簡単に壊せる。もっとも――」 腕からふたたび“鉄”の神器を出現させて、バロウが淡々と説明した。 その巨大な砲身を“箱”に向け、狙いを定めて。 「そうなった時、中の三人は無事じゃ済まないだろうけどね」 「ふーん。そういうこと、するんだ」 それが意味するのは、リョーマを先に始末してから一方的に残りの三人を虐殺するのでも、 逆に三人を集中的に狙ってリョーマの反撃を封じるのでも、どちらも自由にできるということ。 実質的に人質を取ったといっていい状況に、バロウを見据える眼光が鋭くなる。 「四人も一気に殺せるって時に、植木くんに邪魔をされても困るからね。 ……そもそも君たちは仲間を呼んで、多対一でボクを倒すつもりだったんだろ? 手段を問わないというならお互い様だと思うけど」 「あ、それもそっか」 「え……納得した?」 「でも、まだまだだね」 リョーマは己のディパックを地に落とし、テニスボールを数個つかみだして、構える。 「オレなら、そこは『全員かかってきやがれ』って言うよ」 「君、生意気だよ」 苛立ちを顔にあらわすバロウだったが、視線は目の前のリョーマ自体ではなく、別のところに向いていた。 先ほど、撃ち返された“鉄”が着弾した跡へと。 苦々しく、嫌な思い出でもあるかのように。 「こいつ、もしかして……」 ◆ 我妻由乃は、雪輝日記を持っていた。 つまり、天野雪輝がちょっとやそっと距離を空けようとも、補足することは容易い。 結論を言えば、天野雪輝は未だ我妻由乃に追われ続けていた。 未だに殺されていないのは、最後の命を燃やして遠山金太郎が突撃をした、それだけの間にかせいだ“距離”のおかげ。 しかし、それでも。 誰よりも愛しい少女の呼び声が、何よりも冷たい温度を持って、雪輝の背後から降りかかる。 「どうして、ユッキー?」 たとえば遠山金太郎が残した功績のひとつは、ミニミ機関銃による狙撃の機会を奪ったことだろうか。 いくら我妻由乃といえど、姿勢を維持して反動を殺さなければ撃てないそれを追走しながら連射するには無理があった。 追撃される側だったマリリン戦とは違い、追撃して仕留める側となれば、その武装はそこまで優位ではない。 だから、かろうじて殺されずに逃げ続けている。 「どうして、私を愛してるのに、私の“願い”を邪魔するの?」 一万年ぶりに得た『友達』の犠牲に、おそらく意味はあった。 最大の証拠に、今の雪輝は死ぬわけにいかないと必死になって走っているのだから。 ここで殺されてしまえば、『ともに星を見に行く』という願いが叶わなくなるから。 『行けよ』という友の言葉に、背中を押されたから。 しかし、それでもなお、疲れを知らぬとばかりに駆ける追手との距離はつきはなせない。 「ここで逃げることに意味なんてないじゃない。 私を殺して最後の一人を目指すならまだしも、そうしたくないんでしょう?」 念を押すような有無を言わせない声に、雪輝は逃げながら叫び返した。 「僕は、君と二人の未来が欲しいからだよ! 君にとって、僕はたくさんいる『雪輝』の一人かもしれないけど。 僕にとって、我妻由乃はただ一人の人なんだ!」 叫んだことの答えは、拳銃の発砲音を持って返された。 雪輝に語りかけたのはあくまで心を折る為であり、対話する意思は無いということか。 一発目の弾丸は、ちょうど雪輝が横断した路上のガードレールに阻まれて金属音を立てる。 しかし二発目の弾丸が、踏み出そうとした雪輝の右足を強く掠めた。 「ぐぅっ……!」 熱と痛みに足をすくわれ、前のめりに膝をついた。 それを狙っていたのか、由乃は温存していたスタミナを使いきるように加速を果たす。 これまで日記所有者やその配下を葬ってきたように、同じ殺戮が雪輝へと振りかかる。 振り向き、日本刀を振り上げながら疾駆する由乃を、雪輝はスローモーション映像のように目に焼き付けていた。 「僕は、君のことを愛してるんだ……」 「私は、愛してなんかいない」 冷徹な眼差しが見下だしながら、日本刀が振り下ろされる。 雪輝は、無力だった。 「その言葉は、聞き捨てならないな」 ――だからこそ、雪輝を救うのは誰かの助けでしか有り得ない。 下方向から振り上げられた刃が、由乃の日本刀を受け止めていた。 ギィン、と金属同士のぶつかる音。 それはしばらくの鍔迫り合いを演じた後、刃を雪輝からそらすように横に払われる。 「秋瀬くん……!」 「秋瀬、或っ……!」 「頃合いからいって、そろそろ再会があるとは思っていたけどね」 木製の刀身に、黒曜石の刃を埋め込んだ鋸のような剣。 それが、秋瀬或が右手に持つ最後の支給品にして、天野雪輝を守るために戦うという意思表示だった。 「邪魔を、するなっ……!」 ふたたび切りかかる日本刀を鋸の刃で受け止め、秋瀬はその背中でかばう雪輝に問いかけた。 「雪輝君、改めて聞こう。――望みは、決まったかい?」 間髪いれず、雪輝は答える。 「僕は、由乃と星を見に行きたい! ――叶える道が見えなくても、ワガママでも、絶対にそうしたい!」 そう宣言した時。 瞬きするほどの間だけ、秋瀬或が悲しげな微笑を浮かべる。 それを、背中を向けた雪輝に見せることはない。 「なら、僕はその“願い”を叶えるために力を尽くす」 宣言して、憎悪の眼で睨み据える我妻由乃を意に介さず、ただ雪輝に告げた。 「我妻さんはボクが止めるよ。今は逃げてくれ」 「それは……」 それは、ついさっき遠山金太郎に言われたことと同じ要求。 だからこそ、雪輝は目をみはって実行を躊躇う。 しかしだからこそ、数瞬で決断をすると踵を返して逃走を再開した。 遠山金太郎の時には言えなかった言葉を、後ろへと呼びかけながら。 「助けを……絶対に、助けを、呼んでくるから! だから、持ちこたえてくれ!!」 天野雪輝は、友達を見殺しにして泣きもしない人でなしだと自認している。 それでも、我妻由乃のようにほかの人間を『駒』だとは思えなかった。 新たな友によって、生かされたのだから。 彼のおかげで、“願う”ことができるようになったのだから。 だから、それが厚かましくとも、無関係な人間を巻き込む行為だろうとも。 友を救うためならば『助け』だって探しに走る。 ◆ 神崎麗美は、最後に『ごめんね』と言った。 小さな声だったけれど、リョーマたちに向けた謝罪なのかさえも確かではないけれど。 それでも、あんな状態だった少女が、あんな状態から可能性を見せたのだ。 別に越前リョーマは、困っている人を片っ端から助けて回るような正義の味方ではない。 それでも『柱』を名乗るなら、影響を与えた人に対して責任があることぐらいは分かっている。 最後の最後で、『撃たなくてよかった』と思わせてくれたのだ。 その思いにこたえないわけにはいかない。 だから今は、仲間を守る。 「ねぇ……この“箱”って時間がたったら消えてくれたりしないの?」 仲間を閉じ込めた“箱”の上に立って全方位を警戒するように見渡し、リョーマが尋ねた。 「僕に聞いても意味ないと思うけど……こんな使い方をしたことがないから分からないね。期待しない方がいいよ」 「あっそう」 淡々と事実を答えて、『ドン!』とバロウの腕が更なる“鉄”を打ち出した。 それだけならば、威力はあれど単純な直線攻撃に過ぎない。 しかし、 「また来た……!」 どういうわけか、“箱”から見て両側面からも同じ打球が迫り来ている。 全ての攻撃を視界におさめ、リョーマは跳躍した。 “箱”から飛びおりざま利き腕を“百錬自得”のオーラで包み、まずは左側方から迫る打球を横殴りに返球。 バロウめがけて打ち返すと、一瞬で自らの両足へオーラを『移動』させた。 「その技……左腕以外にも使えたんだね」 「人にもよるけど、ね!」 オーラを纏った両脚で加速を果たし、正面からの砲弾へと対処。 オーラの位置を左腕へと戻して、打ち返す。 さすがに非現実的なことやってるなぁという自覚は出てきたけれど、それが却って幸いしたのか、いい加減に修羅場慣れしてきたのか、神崎麗美のマシンガンのような萎縮はなかった。 そのまま一気に右側面からの“鉄”をリターンして、ついでに“箱”の裏手へと回り込もうとしていたバロウの進路にぶつける。 足を踏み出した地点を“鉄”が掠めて、バロウは身をひねり己の半身をかばうようにした。 「ちっ!」 前後左右からの“鉄”による挟撃が失敗して、舌打ちをひとつ。 どうやらバロウは謎の“多方向からの攻撃”を得意戦術としているらしかった。 それが証拠に、バロウを進路妨害するように“タメ”をつくって攻撃をぶつけると、目論見の達成が遠くなったように苦々しい顔をする。 だからリョーマも、なるべくバロウを動かさないような返球を心掛ける。 鉄球が体をかすめ続けたことで、バロウはすでに細かなダメージの蓄積を見せていた。 ボロボロに汚れたダッフルコートを羽織り、息を切らせる。 「ただの人間にしては、しぶといじゃないか……もっとも、そんな攻撃なんかいつまでも続かないよ。 掠めるような打球ばかりで、殺意が無い」 しかし、戦況そのものはバロウが圧倒的に有利。 リョーマのあがってきた息の乱れも、重たくだらりと垂れた腕も、全身をつたう尋常ならざる量の汗も、それを如実に示していた。 どういう仕組みかほぼノーリスクで多方向の鉄球を呼び出せるバロウに対し、リョーマは駆けつけて“箱”の破壊を防がねばならないのだから。 加えて、バロウの一撃は当たりさえすれば致命傷になるのに対して、リョーマには相手を殺す意思までは持てないことがあった。 自分の力を殺人に使うことを良しとしない精神もあったし、神崎麗美の一件で殺す重さを実感してしまったことがある。 しかしどこかで決定打を当てなければ、ずっとこのままでは“箱”の中にいる菊地たちが酸欠になってしまう。 「やっぱり君も“甘い”んだね。本当にうんざりする」 そんな葛藤は、バロウにとって理解しがたいものだったらしい。 次の攻撃を見計らうように間をおいて、吐き捨てるように言った。 「前にも会ったよ。君と同じように、仲間を守ろうとして自分の命を危険にさらすようなお人よし。 そいつも、最後までボクを殺さないように気を使って、甘っちょろい説得の言葉を吐いてきた」 その『お人好し』のことが、よほど気にらなかったのか。 そいつを否定することで、邪魔をする存在をすべて否定しようとするかのように、バロウは疑問を投げかけた。 「どうしてみんな、切り捨てるってことができないんだろうね。 いくら欲しいものがたくさんあるからって、自分が死んだら何も叶えられないじゃないか。 最短距離の道を選んで、全部大事にしたいなんて理想は捨てる。幸せになりたなら、そうするしかないんだよ」 「幸せになりたいから、アンタは殺し合いに乗ったんだ」 「そうだけど?」 それがどうした、それ以上の理由は語ってやらないとばかりに、バロウがみたび右手を大砲に変えようとする。 しかし先んじてリョーマは動き、その右手が変化する前にテニスボールをぶつけていた。 痛そうに手首をおさえるバロウへと、静かに問答を続ける。 「じゃあ聞くけどさ、最短距離で、現実的に、そうするしかないやり方で、夢を叶えようとしてるアンタは――」 「――どうしてそんなに面白くなさそうな顔してるの?」 ぴくり、とバロウが表情をひきつらせた。 いや、楽しく人を殺すのも問題あるんだけどさ、と前置きして、さらに言う。 「ベストの道を選んだわりには、ずいぶんと辛気臭そうな顔してるじゃん。 そんな顔して歩いてきて、楽しい?」 日野日向は、その目を見て自分たちとは違う生き物だとみなした。 月岡彰は、その顔を見て絶望に浸かりきっていると評した。 植木耕助は、その態度を見てこんな奴から犠牲者を出してたまるかと憤った。 越前リョーマは―― ――なんかしんどそうだなと、そんな風に思った。 殺し合いのように世界の暗部で行われていることではなかったけれど、全国のテニスプレイヤーと試合をしていれば色々な奴らとも出会う。 コンプレックスだとか高すぎる目標に抑えつけられて、好きなことをまっすぐに楽しめない奴とか。 三連覇をすることばかりに必死になって、その為なら心を鬼にして、イバラの道を歩いているつもりになっていたヤツとか。 人殺しとひとくくりの問題にするのは失礼だけれど、彼らの印象とも少し似ていた。 自分の身をボロボロにしてでも意地を通すヒトはいるし、目的の為なら手段を選ばないヤツだっているけど、きっとこいつはそういうのとは違う。 世の中楽しいことばかりではないし、我慢や妥協だってあることは知っているけれど、こいつの『楽しくなさそう』はそういうのとも違う。 人を殺すことを嫌々こなしているというより、自分の能力を使っている時さえどこか投げやりに見える。 自分を救いたいのに、手段を見失っているヤツだ。 そのバロウを説得したというお人好しが、助けたくなったのも分からないではない。 「ふざけないでよ。目的を達成するのが楽しいだって?」 こいつは、潰さなければいけないヤツだ。 そういう認識を、バロウもまた手にしていた。 バロウにとって、能力とは母親を傷つけた罪そのものであって、必要がなければ使うどころか目に触れることさえ嫌なものだ。 バロウにとって、夢を叶えるということは、母に存在を許されるという贖罪であって。 絶対に成し遂げなければいけない悲願であって。 どいつもこいつも、 お前は人間として生きていけるとか、 人を犠牲にするなんて許されないとか、 勝手なことばかり言う。 「君にひとつだけ言ってなかったね。 そいつは、手塚って呼ばれてたよ」 やっぱり、と。 リョーマは、そんな風に呟いていた。 そうでなければ、こんな唐突に語り始めるきっかけに乏しい。 いや、そこまで論理的に予想していたわけでなく、推測だったのだけれど。 これまでにも、神崎麗美から『跡部を殺した』と告白された一件があった。 それに、部長はどうして死んだんだろうとか、考えていたこともあった。 「ふーん。それで」 こんなヤツに殺されたのか、とは不思議と思わなかった。 神崎にとっては不本意だろうが、先に彼女と出会っていたおかげかもしれない。 あるいは、きっと。 手塚をあざけったバロウが、この上なく苦々しい顔をしていたからだろう。 大事なのは、部長が馬鹿にされているとかそういう表層のことじゃない。 もっと本質を、見極めろ。 「その時、部長はアンタに、なんて言ったの?」 斬りこむ。 「君はこれから死ぬのに、教える意味がない」 「これから死ぬ予定なら、なおさら教えてくれたっていいじゃん。死なないけど」 「これから死ぬなら、なおさら満足させてなんかやらない」 その態度だけで、察することぐらいはできた。 きっと部長は、こいつにも厳しくて優しかったんだろう。 とはいえ、リョーマは手塚ほど自己犠牲精神にあふれた人格者ではない。 怒っている。 冷静でいられる自分がこわいぐらいには、怒っている。 とりあえずぶっとばして泣かせて膝をつかせたいぐらいには、怒っている。 でも、『部長を殺したヤツに出会ったらどうするか』なんて、とっくに決めていた。 「ま、いいか。オレがアンタを止めたら、その時に教えてよ」 「そんなことができるなら、理由どころか、僕の過去を丸ごと教えたっていいさ」 バロウもまた、怒っている。 一度は完全に否定したヤツが、また目の前に現れたようだったから。 また邪魔されたことに、怒っている。 「オレは、殺し合いに乗った相手に――」 「ボクは、ただの人間なんかに――」 「「絶対に負けないって、とっくに決めてる!!」」 二つの宣言が重なり、それぞれの武器が構えられた。 バロウが新たに行使したのは、“鉄”よりもさらに凶暴な性質を持つ神器。 「“唯我独尊(マッシュ)”!」 凶暴な立方体の“顔”が、あぎとを開いてリョーマに突進。 その脇を固めるように、数発の“鉄”が再現されて繰り出される。 ホッチキスのようにカチカチと開閉される顔は、初見でも『噛みつかれる』と恐怖させるのに十分なものだ。 「でも、遅いよ!」 でも、だからこそ攻略法が閃くのも一瞬のこと。 標的への到達速度ならば、砲弾の形で放たれる“鉄”の方が早い。 “風林火陰山雷”の『雷』を発動。 動くこと、雷霆のごとし。 先に“鉄”をさばいて返球し、最後の“鉄”の一球を“唯我独尊”の“口の中”へと叩き込んだ。 倍返しの威力を持った“鉄”は“口の中”の牙と激しく衝突し――それでも最終的には、噛みくだかれる。 しかしそれでも、“唯我独尊”はその一撃を攻撃終了とみなしたのか、相打ちのように消失した。 「ちぇっ……攻撃は通らないんだ」 「一面への破壊力なら、“鉄”よりはるかに上だからね……心が折れた?」 「まさか!」 そしてバロウは休む間も与えず、さらなる“顔”と“鉄球”を呼び出す。 速攻で片づけたいのは向こうも同じかと推測し、越前は地を駆けながら攻略を思案しはじめた。 ◆ 「くそっ……神崎の支給品の中にも、使えそうなものは無しか」 “旅人”の中に閉じ込められた菊地たち三人は、必死に脱出策をめぐらせていた。 神崎麗美のディパックまでもを検めてみたものの、“旅人”の壁をぶち破って脱出できるような支給品は無し。 いや、綾波レイには心音爆弾という隠し武器もあったのだが、この場でそれを使えば確実に菊地と高坂を道連れにしてしまうだろう。 早く脱出しなければ、外側にいる越前が殺される。 その焦燥が三人の胸を焼き焦がし、無力感は爆発しそうになっていた。 そんなもどかしい時間だった。 ザザッと、ノイズのような音が壁の中で反響したのは。 高坂が、歓喜の声をあげたのは。 「よっしゃああぁぁぁぁ! 予知が来やがったぜ!」 「予知……それ、未来日記か!?」 「『Neo高坂KING』日記だぜ! 数分後に『越前がバロウの作った壁をぶち破る』って書いてあるぞ!」 「本当?」 「ちょっと待て! 画面を見せてくれ」 未来日記の予知の確実性は、菊地ならば『友情日記』の一件で知るところである。 携帯電話から予知画面を確認して、菊地の頬にたちまち喜色がさした。 「よし、各自でここにあるだけの装備を持って、壁が崩れたと同時に突貫だ。 まず越前の無事だけは確保するぞ。壁をぶち破る瞬間までは生きてること確定だからな。 これでシンジの時の二の舞は避けられる」 安堵したところを、気が緩んで。 ――口を滑らせたとしか、言いようがなかった。 いずれ聞かせる話とはいえ、この場で明かしてしまうことは、綾波レイを動揺させる以外の何をも期待できない。 「いま、碇くんのことを言った?」 しかし、ひとたび露見させてしまえば、ごまかすなど到底無理な話だった。 綾波レイが、こればっかりは聞き逃せないとばかりに、 暗闇でも分かるほど、鋭く強い目つきで菊地を見据えていた。 ◆ 「うおおおおぉぉぉぉっ!!」 “百錬自得の極み”と“十球同時打ち”を用いて鉄球をさばいたリョーマは、最後の一打を上空へ向かって打ちあげた。 直後、ひと飛びに己自身を跳躍させ、くるくると体を丸めて宙返りするような不可思議な動きで飛翔する。 「自分の打った弾に、追いついた!?」 あらたな動きを見せたことにア然とするバロウをめがけ、その剛球は放たれた。 超(スーパー)ウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐。 技名は恥ずかしくて口に出せたものではないが、好敵手の遠山金太郎から模倣した大技だ。 超最大級に重いスマッシュの打撃。 その破壊は風圧だけで周囲にあったすべてを吹き飛ばし、近くを浮遊していた“唯我独尊”でさえも突風で軌道をそらした。 バロウもかろうじて直撃は避けたものの、余波だけで宙を舞って後ろの巨木へと背中から激突する。 「ちぇっ、そのまま当てるつもりだったのに……」 いくらリョーマに殺意が無いとはいえ、体のギリギリを鉄球が掠めても動じないことから察しはついていた。 もしかしなくても、こいつの体は頑丈だ。 きっと、鉄球の一発や二発をぶち当てられたところで死ぬことはない。 ボールをぶつけて相手を吹っ飛ばすようなプレイスタイルなんて普段はあまりガラでもないけれど。 (ウソつけドライブAを打ってたじゃないかというツッコミが聞こえた気がする) それでも、相手を傷つけずに解決できる段階は通り越してしまった。 想いがあるだけではダメで、力で潰すだけでもダメなことがあって。きっとそれが今だ。 「なんて威力だよっ……でも残念。ひとつ取りこぼしてる」 風圧に襲われる前に、放物線を描いて飛来していたらしい。 上空から降りかかるように、“唯我独尊”が牙をむいて迫っていた。 「やばっ――」 「空中では身動きが、とれないよね?」 「……とれる!」 空中で身をひねり、スマッシュを打つフェイントをかける時の要領で方向転換。 かろうじて“口”に挟まれることだけは回避したものの、開閉する上顎に鈍く右腕を強打された。 「ぐぁっ……」 骨に、ヒビくらいは入ったかもしれない。 冷静に分析した次の瞬間には、地面にたたき落されていた。 土埃をのんでゲホゲホと咳きこみながら立ち上がるのと、大車輪山嵐に飛ばされて叩きつけられたバロウが立ち上がるのはほぼ同時だった。 「すごいね……ここまで止められるとは、思わなかった」 ふぅ、と息を吐くバロウ。 どちらも、いっそう傷だらけ。しかし、疲労困憊ではリョーマのほうが格段に濃い。 「でも、次で終わりだよ。いくら偉そうなことを吼えたって、力で敵わないなら何の意味も無い」 「にゃろう……」 右腕の痛みを無視して、思考を冷静にしていく バロウの攻撃の手数は、時間が経過するごとに増えていくらしい。 そろそろ、バロウを一撃で仕留めるか“箱”から三人を解放するかしないとまずい。 これ以上の手数を増やしてしまえば、“箱”がどうにか消えてくれたとしても、次の瞬間に全方向からの“鉄”で死なせるようなことになってしまう。 かと言ってバロウの攻撃を“箱”にぶつけてしまっても、その衝撃で中にいる菊地たちが―― ――“一面への破壊力なら” 「あ……そっか」 思いついてしまえば、簡単なことで。 あとは、成功するかどうかだった。 「これで、終わりだよ」 バロウの方も、戦況が長引いて助けが駆けつけてはまずいのだろう。 この一撃で決めるとばかりに、正面と左右から鉄球の群れと“顔”が雪崩かかった。 “鉄”はリターンできるのだから、返しようのない“顔”だけを出せばいいのにとも思ったけれど、 どうやら“顔”だけで総攻撃をかけるといった器用なことはできないらしい。 “無我”のオーラを頭に移し、“才気煥発の極み”を発動。一瞬で計算式を作り上げる。 オーラを足に戻して光速で疾駆し、鉄球の中から相互に軌道干渉できる打球だけを選んで打ち返していく。 “手塚ゾーン”ほど完璧には軌道を操ることはできないが、それでも打球にカーブをかけて、別の打球を妨害させるぐらいはできた。 鉄球同士がぶつかり合って軌道をそらし合うわずかな間、勝負を決める一瞬が待つ。 残っていた正面からの“鉄”を、まっすぐに打ち返す。 そして、遠山金太郎のステップをコピー。その打球へ、脚力を総動員して追いつき―― ――リョーマの動きを追尾しきれずまごついている“唯我独尊”の背部、口と反対側の面へ向かって打った。 「何を――!?」 本来ならば、“箱”に到達するまえ、さっきまでリョーマがいた地点であぎとを閉じるはずだった“顔”が、少しだけ押し出されて。 “旅人”の壁を、一面だけ粉砕した。 「やった……」 埃の舞い上がる“箱”のあった場所を確認して、会心の笑みが浮かぶ。 三人が壁際に立っていたら巻き込まれたかもしれないが、そこは高坂にも未来日記があったのだから、予知を見てくれたと思いたい。 あとは、バロウにとにかく一撃を入れてしまえば―― 「“百鬼夜行(ピック)”!」 ――勝てる戦いだと、思っていた。 “箱”を破られて焦ったバロウが、普段なら使わない神器を解放しなければ。 それは、前回の戦いで、植木耕助を屠ろうとして、碇シンジを仕留めた凶器と同じ。 その武器の速さは“鉄”の比ではないほどに疾く、破壊力もいっそう上回る。 六角柱の鋭い杭が、リョーマの胴体をえぐるように迫っていた。 (しまっ――) ひときわ重い打球を打って崩れた体勢から、左右に飛ぶなどできるはずがなく。 どん、と常人には耐えきれぬ一撃が、胴を打ち抜いていた。 ◆ 「越前、無事か!?」 菊地にはジグザウエル、高坂にはクロスボウガン。 手に手に神崎の遺品を持って突入した菊地たちの視界は、 デジャブを以って、迎えられることになった。 「まさか、ただの人間がボクに神器を四つも使わせるなんてね。 でも、最終的な結果は変わらないよ。彼は死んだ」 そこには、体をくの字にして力無く転がる越前リョーマの姿。 「ッ貴様ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 碇シンジを殺された。 神崎麗美を殺された。 たった今、また新たに仲間を殺された。 いとも簡単に、こんなヤツに。 いくら菊地善人でも、冷静さを保つことなど不可能だった。 怒りにとりつかれ、何発もジグザウエルの引き金を引いていく。 バロウは冷淡な目でそれを見て、“威風堂々(フード)”の盾を出現させた。 さんざんに手こずらされた『手塚の置きみやげ』は始末したけれど、こうも五月蠅くされては植木を呼んでしまいかねない。 ここはふたたび“旅人”で閉じ込めてから、“鉄”で三人まとめて始末しよう。 “威風堂々(フード)”の盾から流れ弾に気を付けて顔をのぞかせ、 拳銃を撃ち続ける菊地の姿と、泣きそうな顔で越前とやらをゆさぶる高坂の位置を確かめる。 ――ひとり、足りない? そのことを、やっと疑問に思ったとき。 『見えない誰か』が、横殴りの当て身をバロウに充てていた。 「なっ!?」 完全に油断していたことと、相手の姿がまったく『見えなかった』という誤算から、面白いようにその当て身は決まり、バロウはぐるぐると転がったのちにマウントポジションで倒される。 衝撃で背負っていたディパックの口が外れ、支給品である絵筆や画材や軽いマントが地面へと投げ出される。 同時に、そのもう一人の体を隠していた『透明なマント』も剥がれ落ちた。 “威風堂々(フード)”が解除されて、その姿が他の二人の視界にも開けた。 「綾波……」 仰向けに倒れたバロウにのしかかり、綾波レイがベレッタM92をバロウの額にあてていた。 「あなたは、許せない」 表情の宿らない顔から、絞り出すような声が漏れる。 綾波レイが、バロウ・エシャロットを殺す。 菊地は、それを止められなかった。 杉浦綾乃の『先生』として、仲間を『ヒトゴロシ』にしてはならないと、頭では理解していて。 更に言えば、バロウが近距離戦の備えをしているかもしれない以上、綾波のそれは命を危険にさらす行為だと理解していて。 それでも、自分が同じ立場だったら、同じことをしたのではないかと。 そんな葛藤を、持ってしまった。 だから、菊地は制止ができない。 しかし、制止の声はあがった。 「撃ったらダメだ!!」 もう聞けないかと思っていた声を、全員が聞いた。 「えち、ぜん、くん……?」 「そんな……確かに“百鬼夜行”は当たったのに」 口でも切ったのか、血を吐き出しながら。 越前リョーマが、必死に上体を起こしていた。 ◆ “百鬼夜行”は、確かに回避不能だった。 だから、リョーマは金属バットで六角柱の先端を受け止めながら。 風林火山の“風”の技を使って、『自分から後方に吹き飛ばされ』ていた。 かつて、真田弦一郎と初めて対決した際に、超火力の打球から同じ手段で身を守ったように。 金属バットはへし折られ、衝撃でしばしの間だけ意識を持っていかれて。 それでも致命傷は、回避していた。 その取り戻した意識で、リョーマが綾波を止める。 かつて、己が綾波レイから制止されたように。 バロウもまた、可能性を持っている一人だと、対峙するうちに理解できてしまったから。 「確かにそいつは、自分のためにもう何人も殺してるんだろうけど……殺した方がいいって言う人もいるかもしれないけど! でもそいつも、救われたがってるから……神崎さんの時と同じだから、綾波さんが撃ったらダメでっ゛……」 最後の方は言葉をとぎらせ、呼吸の止まっていた反動で咽る。 綾波は、そんなリョーマを見て、安堵したように肩を落とした。 しかし、それでも。 「ごめんなさい。それは、できない」 人を殺してはいけないとか、復讐は許されるのか否かとか。 そんな、人が成長するにつれて身につける倫理観が歯止めをかけるには、綾波はまだ幼すぎた。 彼女は、見た目ほどの年月を生きていない。 許せないという感情しかなかった。 立ち上がらせてくれた仲間の制止をも振り切って、引き金へと指をかける。 リョーマは、“百鬼夜行”のダメージが尾を引いて、動けない。止められない。 引き金にかかった指が、引かれて。 「ちょっと待ったぁ!!」 ふたつのことが、同時に起こった。 ひとつは、ただ一人だけ、高坂王子が制止に動いたこと。 至近距離からでは撃ちにくいクロスボウガンを捨て、バロウがディパックからこぼした『大きな布』を走りながら拾い。 その布で、バロウを覆って綾波の視界から隠し、同時に綾波を押しのけた。 それ自体は、バロウの視界をふさいでとっさの反撃を防ぎつつ、布で縛り上げてしまおうという作戦。 しかし、いまひとつの出来事が起こる。 殺されると直観したバロウが、せめてもの道連れにと、ゼロ距離から“百鬼夜行(ピック)”を放とうとしていたこと。 どうにかして綾波に抑えつけられていた体勢から右手を動かし、撃たれながらでもその体を打ち抜こうとした。 だから、それが起こったのは同時。 高坂が“百鬼夜行”の直撃を受けて吹き飛び。 バロウが、高坂に支給品である“死出の羽衣”をかぶせられて、その姿をくらませた。 【???/一日目 午後】 【バロウ・エシャロット@うえきの法則】 [状態]:左半身に負傷(手当済み)、全身打撲、疲労(大) [装備]:とめるくん(故障中)@うえきの法則 [道具]:基本支給品一式×2(携帯電話に画像数枚)、手塚国光の不明支給品0~1 基本行動方針: 優勝して生還。『神の力』によって、『願い』を叶える 1:??? [備考] ※名簿の『ロベルト・ハイドン』がアノンではない、本物のロベルトだと気づきました。 ※『とめるくん』は、切原の攻撃で稼働停止しています。一時的な故障なのか、完全に使えなくなったのかは、次以降の書き手さんに任せます。 (ただし、使えたとしても制限の影響下にあります。次に使用できるのは2時間以後です) ※死出の羽衣の効果で、F-5以外のどこかのエリアに移動しました。次の書き手さんに任せます。 ※同人誌制作セット@ゆるゆりの画材がF-5の現場付近に散乱しています。 ◆ 戦況は、膠着していた。 「さて、これで、雪輝君が『一万年後』の住人だという説明は終わったけれど」 戦いながら語り続けて、秋瀬或は一息をはさんだ。 日本刀を、もう何十回と鋸状の剣でいなしただろうか。 その黒曜石が、刃にあてられてひとつ欠けた。 「それでもなお、君は雪輝君を『守る』というのかい? サバイバルゲームを勝ち抜いて神様になったところで、雪輝君は絶望するだろう。 君の『守る』はただの押し付けでしかないんだよ」 お前の『雪輝を失いたくない』は欺瞞でしかないと。 そう糾弾して、秋瀬或は打ちおろすような一閃を放った。 バックステップで避ける我妻由乃の髪が尾を引いて、髪のひと房が剣のさびになる。 「問題ないわ。だってこのゲームを開いた神様は、デウスよりずっと強い力を持ってるもの」 初めて、我妻由乃が秋瀬或の言葉に答えを返した。 「それなら今度こそ、全てを0(チャラ)にすることだってできるかもしれない。 そうすれば、二人で幸せになれるじゃない」 「……それは、雪輝君が望む幸せの形とは違う気がするよ。もういい」 剣戟を交わし、 交錯して、 回避して、 ステップを踏んで踊るように場を巡っていた二人のうちの片方が、遊びを終わらせるように後退して距離をとった。 「我妻さん……君を刺激しないためとはいえ、どうして僕が、基本的に君と雪輝君の交際を容認して、一時は応援さえしてきたか、分かるかい?」 「ユッキーの機嫌を損ねたくなかったからでしょう?」 「それもあるけど、それだけじゃない」 その一瞬で、秋瀬或は身に纏う空気を一変させる。 視線が、鋭く研がれた氷の刃のように。 冷たく、冷たく、どこまでも冷たく。 それは、秋瀬或が生まれて初めて、私怨から他者に殺意を向けた瞬間だった。 「君の方が、雪輝くんのことを、僕よりも愛していると思ったからだよ」 そこだけは、勝てないと認めていた。 歪んではいても、本物だと思っていた。 『我妻由乃は最終的に雪輝を殺すつもりではないか』と勘違いしていた時も、 雪輝への愛情自体には偽りが無いかもしれないと、どこかで信じていた。 「だから素直に人を愛せない今の我妻さんを、容赦するわけにはいかないな」 (ハッタリか?) その気迫に由乃は驚き、しかし冷静さは崩さない。 秋瀬或は、基本的に雪輝の意思を尊重する。ならばここで由乃を殺しまでするとは思えない。 しかし今の秋瀬は、後から雪輝にいくら恨まれようとも、由乃を生かしておくわけにはいかないという鋼の意思を宿しているようにも見える。 それが由乃をひるませるハッタリなのか、判断する材料はない。 両者の戦闘力そのものは、拮抗している。 ささいな怯えでも、それが反映されるだけで勝機は大きく遠のくことだろう。 だが、しかし。 それでも。 『雪輝をも殺せると言い張っている』分だけ、今の由乃の方が有利だ。 我妻由乃は、思いついていた。 秋瀬或が、条件反射的に隙を見せてしまう、その手段を。 刀剣を構えて疾駆し、弱点でもある『雪輝日記』をめがけて突きの構えを取る秋瀬。 そんな彼を前にして。 胸ポケットから、雪輝日記を取り出す。 ただ、それだけ。 (雪輝君……!?) 雪輝日記は、無差別日記と組み合わせない限り、きわめて貧弱な予知性能しか持たない。 天野雪輝の行動をしか予知できない日記だ。 つまり――我妻由乃がそれを使う時は、天野雪輝を利用した作戦を立てる時でしか、ありえない。 それは、我妻由乃と天野雪輝を長く観察し続けてきた、秋瀬或だからこその隙。 『その日記が機能するとき、雪輝は由乃に利用されている』という条件反射。 この場に、天野雪輝が戻ってきたかもしれない。 天野雪輝を利用した、一発逆転の秘策が発動したかもしれない。 有り得ないと分かっていても、このまま踏み込むのが上策だと理解していても、思考にノイズが走る。 集中力が『雪輝のいるかもしれない』周囲へと拡散される。 我妻由乃は、それを待っていた。 もう片方の手に握っていた、凶器を振るう。 秋瀬は片足でブレーキを踏んで回避しようとするが、遅い。 斬、と。 日本刀が一閃した時に、秋瀬或の右手首から先がすっぱりと切り落とされていた。 ◆ 「わたしの、せい……?」 「ちげぇよ……バカ」 腹部を、痛々しい形に変形させて。 息も絶え絶えの高坂は、それでも否定した。 菊地善人の助けで上体を起こして、血を吐きながらも綾波を見上げて。 「お前をかばったわけじゃなくて……上手く言えねぇけど。 たとえ、さっきのがなくても、お前じゃなくても、とびだしてた気がするんだよ。 ……あの状況じゃ、どのみち殺すかどうかになって……止めてた……。 バカなこと、したぜ…………」 だからこれはオレの責任だ、と高坂は認めた。 ふだんの高坂なら失敗の責任を自分でかぶるなんてことはしないけれど。 それでも、綾波レイのうろたえるさまを見て、自分を責めさせるのは良くないと、そんな風に気が利いてしまった。 「だったら、どうして……?」 それはつまり、あくまでバロウの命を助けるために、あの場に乱入したということ。 神崎麗美を殺したバロウに対して、高坂が命懸けでそこまでする義理は全くさっぱりなかったはずだ。 ずいぶん、長いこと黙ってから。 残された最後の呼気を吐き出すようにして、高坂は言った。 「なんか……アイツが救われることを否定したら。 …………雪輝も、救われない気がしたんだよ」 多くの人間を殺して、恨まれている。 それは、高坂が大嫌いな、あの少年も同じだった。 高坂は、ツインタワービルに突入する以前の時点で、彼の動向を詳しく把握していない。 ただ、両親を殺されたショックで殺し合いに乗ったらしいとか、ぼんやりと聞いている程度だった。 それでも、あのバロウと似たような行為をしたらしいぐらいのことは、把握していたから。 救われたがっているだけの、殺してはいけないヤツだと聞いて。 バロウの無様な姿を見て、雪輝のことを思い出して。 気が付いたら体が動いていた。 「勘違いするなよ……オレは別に、雪輝を救いたいなんて、思っちゃいねぇんだ……」 思いがけないことを言われて、黙りこむしかできない三人へと。 へへっと、力なく笑った。 「……ただ、救われてもいい……ぐらいには、思ってた」 それで、残った命の大半を燃やしつくしたらしい。 長いこと仲間だった二人への別れの言葉は、とても簡素なものだった。 「だから、まぁ……せいぜいがんばれや……仲良くやれよ」 「はい」 「うん」 綾波がまた座りこんでしまわないように、リョーマが綾波の手を繋いでいた。 それを高坂は、羨まし気に見ていた。 顔をうつむけている綾波に、せめて高坂が生きてる間に顔を上げさせてやりたいと思ったのか。 菊地があえて、別れの時間を壊す覚悟で言葉をかけた。 「止めなかったオレも同罪だ ……でも、さっきみたいな無茶はやっぱりやめてくれ。でないと、シンジも浮かばれないさ」 「碇君が……?」 菊地は綾波の耳元へと顔をよせ、先刻は伝えきれなかったことを伝える。 それは、碇シンジが、人生で最後に遺した言葉だった。 「え……」 後悔に包まれて暗くなっていた綾波レイの面差しが、驚きにつつまれていく。 それは、仲間を失おうとしていたばかりの少女には、唐突すぎて、大きすぎて、重すぎた。 驚くばかりで、咀嚼できずに、ただ言葉を頭で反響させるしかできない。 しかしそれでも、顔を上げさせるというだけの効能は確かにあった。 高坂はそれを見て、少しだけほっとしたようだった。 リョーマはそれを、興味深そうに見ていた。 そんな、あとは臨終を見送るはずだっただけのわずかな時間。 どんな因果律の采配が起こったのか。 「高坂……?」 天野雪輝が、その場に現れた。 呆然と、立ち尽くしていた。 ◆ その時、ぼやけていた高坂王子の視界が、くっきりと定まった。 雪輝だった。 天野雪輝がいた。 情けなさそうなバカ面を、ぼけっと晒して立っていた。 力の入らなくなっていた体が、執念を注ぎ込まれたかのように活力を取り戻す。 言葉さえ惜しむように身振り手振りで、菊地に連れていくようにと指示した。 天野雪輝の元へ。 何を言いたかったのだろう。 確かに高坂王子は、天野雪輝を探して、問い詰めようとしていたはずだ。 たしか、この殺し合いはどういうわけだと、そんなことを問い詰めたかったはずだ。 いや、違う。 何か言うよりもまず、コイツには『こう』してやるのがいいんだ。 両脇を、菊地と越前とに支えられて進み出る。 天野雪輝の姿が、目の前にあった。 ――ドゴ 拳を握って、殴るだけの力がどこにあったのか。 熱い一撃が、雪輝の頬を横殴りに撃ちぬいていた。 「友達(ダチ)が死にかけてんだから……もっと、泣きそうな顔、しろよ……」 言えた。 殴れた。 そのことを、満足するように、もう一度だけ拳をつきあげて。 それが、本当の本当に最期になった。 拳が、握られたまま、だらりと垂れ落ちる。 死にかけの人間に殴られたと思えないほどに無様によろけて、天野雪輝は尻餅をついた。 「あ………あぁぁ………」 誰かに殴られたのは、それこそ一万年ぶりだった。 思い出させる。 遠くにぼやけてかすんでいた記憶が、よみがえる。 この痛みと熱を、雪輝は知っている。 ――やりたい放題やっといて泣くんじゃねぇ。テメェは自分の都合で友達(ダチ)を殺した悪党だろうが。 最後の最後で、雪輝のことを友達だと認めていた。 その拳は、一万年の時を越えて、ふたたび届いた。 「あの時はっ……! 『泣くんじゃねぇ』って言ったくせに!」 雪輝が、泣くことはなかったけれど。 その顔は、誰もがそう見えるほど、『泣きそうな顔』だった。 ◆ 「僕の友達を……秋瀬君を、助けてください!!」 天野雪輝が最初にしたことは、土下座だった。 それはもう、完璧なまでにかしこまった土下座だった。 「おい、お前は殺し合いに乗ってたはずじゃ……」 日野日向から聞いた情報は、菊地に雪輝を警戒させてあまりあるものだったけれど。 「もう、高坂さんが殴ったよ」 「……それもそうか」 越前の言葉で、それも霧散する。 高坂が殴った理由は、雪輝を反省させる為というより、高坂らしい行動をした結果の産物だろうけれど。 それでも、その時に交錯した高坂と雪輝の表情は、警戒をとくに足りるものだった。 「急ぐんでしょ。案内して」 「おい、越前。お前はまだ怪我が」 「もう平気っスよ。だいたい話してる時間も勿体ないんだし」 「わたしは越前君と行く……さっきの責任はあると思うし、混乱もしてるけど。 でも、もうこれ以上、失うことだけは嫌だから」 「分かったよ、俺も……いや、まず植木を引っ張ってくる。オレ一人が付いて行くより役に立てるだろうし。 それに全部が終わったら、こいつらを埋葬することもできるからな。 なんなら、綾波は杉浦に任せても……」 「いい、落ち着いたら、植木君から碇君のことを聞きたいけど。 今は聞いても、また動けなくなって足を引っ張るかもしれないから。 それに、さっきの放送の後に、越前君たちについて行くって決めたから」 「越前……」 その名前に聞き覚えがあるらしく、雪輝は思いがけず反応を見せた。 「君……もしかして、コシマエくん?」 【F-5 南東部/一日目 午後】 【菊地善人@GTO】 [状態] 健康 [装備] デリンジャー@バトルロワイアル [道具] 基本支給品一式×2、ヴァージニア・スリム・メンソール@バトルロワイアル 、図書館の書籍数冊 、カップラーメン一箱(残り17個)@現実 、997万円、ミラクルんコスプレセット@ゆるゆり、草刈り鎌@バトルロワイアル、 クロスボウガン@現実、矢筒(19本)@現実、火山高夫の防弾耐爆スーツと三角帽@未来日記 、メ○コンのコンタクトレンズ+目薬セット(目薬残量4回分)@テニスの王子様 、売店で見つくろった物品@現地調達(※詳細は任せます)、 携帯電話(逃亡日記は解除)、催涙弾×1@現実、死出の羽衣(6時間後に使用可能)@幽遊白書 基本行動方針 生きて帰る 1:急いで植木たちと合流し、綾波レイたちの元へ再合流。 2:落ち着いたら、綾波に碇シンジのことを教える。 3:次に仲間が下手なことをしようとしたら、ちゃんと止める [備考] ※植木耕助から能力者バトルについて大まかに教わりました。 ※ムルムルの怒りを買ったために、しばらく未来日記の契約ができなくなりました。(いつまで続くかは任せます) ◆ 我妻由乃の持つ『雪輝日記』に、本当に予知のノイズ音が走った。 「由乃ぉっ!!」 名前が呼ばれるのと、ほぼ同時。 高速でテニスボールの弾丸が放たれ、我妻由乃の武器を持つ手を強かに直撃した。 「いたっ……」 日本刀を取り落しそうになり、かろうじて堪える。 しかしその動作は、今度は我妻由乃にとっての隙となるものだった。 秋瀬或が、動く。 『まだ切られた右手が柄を握っている刀剣』を左手でつかみあげ、二撃目を叩きこもうとしていた。 雪輝日記のある、左手に向かって。 (ハッタリ、じゃない……?) 一瞬で視線をめぐらせ、状況を把握。 逃げ出したはずの雪輝が、拳銃を手に駆け寄ってきている。 そんな雪輝に並ぶように、細長い棒を掲げてボールを撃とうとする少年。 それを援護するように拳銃を構える、白髪の少女。 秋瀬は片手を失っても、なお危険。まさに雪輝日記を破壊しようとしている。 この状況でそれでもなお殺そうと粘るとしたら、 まるで『ユッキーに対してこだわっている』みたいだった。 そんなことは無い。 雪輝への思いを否定する考えが、撤退を決断させた。 「……次は無いわよ」 「由乃っ!!」 くるりと踵を返して逃亡する背中を、雪輝の叫びが突き刺す。 「必ず! いつか君を迎えに行くから!!」 【F-5南西部/一日目・午後】 【我妻由乃@未来日記】 [状態]:健康、見敵必殺状態、 [装備]:雪輝日記@未来日記 来栖圭吾の拳銃(残弾0)@未来日記、詩音の改造スタンガン@ひぐらしのなく頃に、真田の日本刀@テニスの王子様、霊透眼鏡@幽☆遊☆白書 [道具]:基本支給品一式×5(携帯電話は雪輝日記を含めて3機)、会場の詳細見取り図@オリジナル、催涙弾×1@現実、ミニミ軽機関銃(残弾100)@現実 逆玉手箱濃度10分の1(残り2箱)@幽☆遊☆白書、鉛製ラケット@現実、不明支給品0~1 、滝口優一郎の不明支給品0~1 基本行動方針:真の「HAPPY END」に到る為に、優勝してデウスを超えた神の力を手にする。 0:一時撤退。 1:雪輝はしばらく泳がせておく(出会えば殺す) 。 2:秋瀬或は絶対に殺す。 3:他の人間はただの駒だ。 ※54話終了後からの参戦 ※秋瀬或によって、雪輝の参戦時期及び神になった経緯について知りました。 ◆ 「あー……………疲れた」 「さっきは平気って……」 「運動が終わったら一気にくるタイプなんスよ。 綾波さんも……考えること多いけど、まずは休憩して」 「うん……」 天野雪輝が学校の保健室から調達してきた救急セットで、喪失した右手から血を止めて。 初めて見る顔の少女と少年が、秋瀬の元へ歩み寄ってきた。 「はい」 差し出されたのは、テニスボールらしきただの球体だった。 脇の下にでもはさんで、止血の手助けに、ということらしい。 どっかと腰かけ、そして力尽きたのか、そのままごろんと仰向けに寝ころぶ。 少女がそばに控えるように座ると、少年の手当をする為らしく、救急箱を取って薬品と湿布を見つくろい始めた。 「ありがとう。君は……」 天野雪輝が、先んじて答えた。 「越前リョーマ君だよ。遠山の、友達」 「まだその話はぜんぜん聞いてないけどね」 越前リョーマ。 何度も聞いたことのある、名前だった。 ここに至るまでに、色々な人物から。 釣り目がちの大きな瞳が、秋瀬或をじーっと見上げる。 どうやら、疲れて寝ころびながらでも、詳しい事情を聞きたい意思はあるらしい。 「そうか……それなら、説明しないといけないね」 幾つかの出来事を、思い返す。 手塚国光の、遺言を受け取ったこと。 真田弦一郎から、忠告を受けたこと。 月岡彰の、宣言を聞いたこと。 遠山金太郎から、叱咤されたこと。 跡部景吾から、情報を得たこと。 「君に、伝えたいことがあるんだ。たくさんの人たちから」 × × × そして。 みんなから、越前リョーマに。 【高坂王子@未来日記 死亡】 【残り 21人】 【F-5南西部/一日目・午後】 【天野雪輝@未来日記】 [状態]:右足にかすり傷 [装備]:スぺツナズナイフ@現実 、シグザウエルP226(残弾4) [道具]:携帯電話、学校で調達したもの(詳しくは不明) 基本:由乃と星を観に行く 1:越前リョーマに、遠山のことを話す 2:僕は助けを求めても、いいのか…? ※神になってから1万年後("三週目の世界"の由乃に次元の壁を破壊される前)からの参戦 ※神の力、神になってから1万年間の記憶は封印されています ※秋瀬或が契約した『The rader』の内容を確認しました。 【秋瀬或@未来日記】 [状態]:右手首から先、喪失(止血中) [装備]:The rader@未来日記、、携帯電話(レーダー機能付き)@現実、セグウェイ@テニスの王子様、マクアフティル@とある科学の超電磁砲、リアルテニスボール@現実 [道具]:基本支給品一式、インサイトによる首輪内部の見取り図(修復済み)@現地調達、火炎放射器(燃料残り7回分)@現実 基本行動方針:この世界の謎を解く。天野雪輝を幸福にする。 1:越前リョーマに、知り合いのことを話す。 2:天野雪輝の『我妻由乃と星を見に行く』という願いをかなえる [備考] 参戦時期は『本人の認識している限りでは』47話でデウスに謁見し、死人が生き返るかを尋ねた直後です。 『The rader』の予知は、よほどのことがない限り他者に明かすつもりはありません 『The rader』の予知が放送後に当たっていたかどうか、内容が変動するかどうかは、次以降の書き手さんに任せます。 【越前リョーマ@テニスの王子様】 [状態]:疲労(大)、全身打撲 、右腕に亀裂骨折(手当て中) [装備]:青学ジャージ(半袖)、太い木の棒@現実、ひしゃげた金属バット@現実 リアルテニスボール(ポケットに2個)@現実 [道具]:基本支給品一式(携帯電話に撮影画像)×2、不明支給品0~1、リアルテニスボール(残り3個)@現実 、自販機で確保した飲料数種類@現地調達、 S-DAT@ヱヴァンゲリオン新劇場版、壊れたNeo高坂KING日記@未来日記、『未来日記計画』に関する資料@現地調達 基本行動方針:神サマに勝ってみせる。殺し合いに乗る人間には絶対に負けない。 1:秋瀬或の話を聞く。 2:疲れた……秋瀬らの話を聞きがてら休息する。 3:バロウ・エシャロットには次こそ勝つ。 4:ちゃんとしたラケットが欲しい。 [備考] NEO高坂KING日記はバロウの百鬼夜行によって破壊されました。 【綾波レイ@エヴァンゲリオン新劇場版】 [状態]:疲労(小) 、傷心 [装備]:白いブラウス@現地調達、 第壱中学校の制服(スカートのみ) 由乃の日本刀@未来日記、ベレッタM92(残弾13) [道具]:基本支給品一式、 天野雪輝のダーツ(残り7本)@未来日記、第壱中学校の制服(びしょ濡れ)、心音爆弾@未来日記 、隠魔鬼のマント@幽遊白書 基本行動方針:??? 1:自責と後悔……今は、越前君の手当て 2:天野雪輝らに、高坂のことを話さないといけない 3:今は、越前と行動。もう誰も失いたくない? 4:落ち着いたら、碇君の話を聞きたい。色々と考えたい 5:いざという時は、躊躇わない…? [備考] ※参戦時期は、少なくとも碇親子との「食事会」を計画している間。 ※碇シンジの最後の言葉を知りました。 【マクアフティル@とある科学の超電磁砲】 秋瀬或に支給。 実在する南アメリカ(アステカ)の刀剣「マクアフティル(macuahuitl)」 12世紀頃~16世紀ほどまで使用されていた。 アステカ魔術師のショチトルが携行している武装。 木製の刀身の両側面に細かい石の刃をいくつも並べ、ノコギリのように『引き切る』構造をしている。 超電磁砲9巻にも使用者ごと登場しており、佐天涙子の危機を救っている。 Back ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 投下順 Next 四人の距離の概算 Back ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 時系列順 Next ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 菊地善人 錯綜する思春期のパラベラム(前編) ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 天野雪輝 中学生日記 ~遠回りする雛~ ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 綾波レイ 中学生日記 ~遠回りする雛~ ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 高坂王子 GAME OVER ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 越前リョーマ 中学生日記 ~遠回りする雛~ ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 秋瀬或 中学生日記 ~遠回りする雛~ ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 我妻由乃 狂気沈殿 ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- バロウ・エシャロット こどものおもちゃ(Don t be)
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/891.html
この話大好きです。めっちゃ感動。 - あいつに届け 2010-06-25 17 02 55 いい話!! - 五十嵐 2010-10-11 00 55 39 どきどきした! - ミー 2010-12-11 12 08 44
https://w.atwiki.jp/sakuga/pages/2163.html
小林 千鶴 【こばやし ちづる】 XEBEC出身。 現在はstudioMOTHER所属。 同期に沓澤洋子、北田勝彦、押山清高がいる。 ■蒼穹のファフナー(TV/2004) 動画 6話 13話 16話 26話 ■サクラ大戦 ル・ヌーヴォー・巴里(OVA/2004) 動画 1話 ■ロックマンエグゼ 光と闇の遺産(劇場/2005) 動画 ■ロックマンエグゼStream(TV/2004~2005) 動画検査 51話 ■魔法先生ネギま!(TV/2005) 動画チェック 26話 ■エレメンタル ジェレイド(TV/2005) 動画 13話 18話 26話 ■ぺとぺとさん(TV/2005) 動画 11話(共同) ■SHUFFLE!(TV/2005~2006) 動画チェック 12話(共同) ■魔女っ娘つくねちゃん(OVA/2005~2006) 動画 2話 5話 6話 ■ロックマンエグゼBEAST(TV/2005~2006) 動画検査 14話(共同) ■ディノブレイカー(TV/2005~2006) 動画検査 OP(共同) ED(共同) ■蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT(TVSP/2005) 動画検査(共同) ■ザ・サード ~蒼い瞳の少女~ (TV/2006) 原画 8話 11話 13話 14話 18話 第二原画 5話 9話 11話 動画チェック 1話(共同) ■ブレイブストーリー(劇場/2006) 動画 ■流星のロックマン(TV/2006~2007) 原画 39話 ■武装錬金(TV/2006~2007) 原画 OP 1話 7話 10話 14話 18話 21話 25話 ■Over Drive(TV/2007) 原画 OP 1話 7話 16話 24話 26話 ■天元突破グレンラガン(TV/2007) 原画 3話 ■ヒロイック・エイジ(TV/2007) 原画 2話 8話 16話 22話 26話 ■しおんの王(TV/2007) 原画 16話 ■Mnemosyne-ムネモシュネの娘たち-(TV/2008) 原画 6話 ■かのこん(TV/2008) 原画 OP 1話 5話 9話 11話 ■To LOVEる -とらぶる-(TV/2008) サブ設定協力 1話~26話 原画 ED1 1話 ■今日の5の2(TV/2008) プロップデザイン 総作画監督 5話(共同) 作画監督 2話 8話(共同) 原画 ED2 2話 6話 第二原画 4話 ■ミチコとハッチン(TV/2008~2009) 原画 7話 8話 ■屍姫 赫(TV/2008~2009) 原画 10話 ■Pandora Hearts(TV/2009) キャラクターデザイン(共同) 総作画監督 1話 2話(共同) 3話 4話 5話 6話 7話 8話 9話 10話(共同) 13話 15話 17話 18話 20話 22話(共同) 作画監督 OP(共同) ED(共同) 25話 イラストレーション ED2 原画 ED1 ■君に届け(TV/2009~2010) 原画 22話 ■れでぃ×ばと!(TV/2010) 原画 OP ■輪廻のラグランジェ(TV/2012) キャラクターデザイン(共同) 総作監 2話 3話(共同) 7話 9話 10話(共同)11話(共同) 12話 総作監補 1話 4話(共同) 5話 6話 8話 作画監督 ED 3話(共同) 9話(共同) 12話(共同) 原画 1話 ■輪廻のラグランジェ 鴨川デイズ(OVA/2012) キャラクターデザイン(共同) 総作監(共同) ■輪廻のラグランジェ season2 (TV/2012) キャラクターデザイン(共同) 総作監 1話~12話(共同) キャラクター作監 4話 11話 キャラクター作監補 6話 レイアウト作監補 4話 作画監督 ED 4話 11話 第二原画 12話 ■アイカツ! -アイドルカツドウ!- (TV/2012~2016) 原画 133話 142話 ■宇宙戦艦ヤマト2199(TV/2013) キャラクター作画監督 25話 原画 26話 ■マギ The kingdom of magic(TV/2013) 第二原画 18話 ■勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。(TV/2014) 作画監督 4話(共同) ■東京ESP(TV/2014) 作画監督 12話(共同) ■トリアージX(TV/2015・OVA/2015) サブキャラクターデザイン 作画監督 7話(共同) 10話(共同) 11話(OVA)(共同) ■トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察(TV/2017) 作画監督 26話(共同) 37話(共同) ■宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち(劇場/2017~2019) 作画監督 6話(共同) 8話(共同) 12話(共同) ■女神寮の寮母くん。(TV/2021) 作画監督 2話(共同) ■夫婦以上、恋人未満。(TV/2022) キャラクターデザイン 総作画監督 1話 2話 4話 5話 6話 7話 8話 11話 12話 作画監督 1話(共同) 2話(共同) 4話(共同) 7話(共同) 8話(共同) 11話(共同) 12話(共同) ■転生貴族、鑑定スキルで成り上がる(TV/2024) サブキャラクターデザイン 7話(共同) 12話(共同) 総作画監督 7話(共同) 9話 12話 アバン作画監督 2話 3話 作画監督(共同) 3話 7話 11話 12話 原画 OP
https://w.atwiki.jp/naianakikaku/pages/1490.html
名前:千鶴(チヅル) 性別:女 容姿:明るい茶色の髪と首にチョーカー、耳にピアス 詳細:「いかせのごれ」に興味を持ち、島根からやってきたジャーナリスト。 性格はサバサバしており、悪く言えば大雑把。しかし好奇心が旺盛で、痛い目を 見ようが、一度興味を持ったことに対しては本人が満足するまで関与をやめない為、 あきらめが非常に悪い。 能力は無し。代わりに「タカミムスビ神衛隊」という妖精達を従えている。 「タカミムスビ神衛隊」 ひとつの妖精を隊長とした六部隊の妖精達の総称。 それぞれタイプや特性が違い、状況に応じてチヅルに呼び出される。 彼らの姿はチヅルとの新密度により、相手に見えたり見えなかったり するらしい。 《隊長達》(名前はチヅルからの呼称) すーちゃん・・・「月部隊」夜に応じて能力が変化する。女型。 くーたん・・・「火部隊」火に強い。男型。 なーさん・・・「水部隊」水に強い。男型。 びっちゃん・・・「木部隊」自然と一心同体。女型。 こんくん・・・「金部隊」電気に強い。男型。 なっちゃん・・・「土部隊」力持ち他。女型。 「いかせのごれ」の秘密を探るべく、独自に調査を行っている。 一般人という立場の為、組織と接触することは出来ない。その為、情報屋や 便利屋など、組織に属していない人達との接触を繰り返しながら 少しずつ情報を収集しているらしい。たまに大胆な行動に出ることもある。 現在はいかせのごれ駅近くのとあるマンションの一室に住んでいる。 ちなみにフルネームは八十神千鶴(ヤソガミチヅル) PNは父親と同じものを使って八十神と名乗っている 好きなものはミステリアス小説 嫌いなものはびっくりするもの 《人物相関表》 名前 作者 所属 関係 ソース ソウヤ 光機 なし 友人(ギブアンドテイク) 八十神千鶴の華麗なる一日「朝」、八十神千鶴と不可思議な拾い物 赤城 明夢 柴犬 神社 友人 八十神千鶴の『神社』訪問 フミヤ 紅麗 なし 友人 フミヤ 久我 長久 えて子 情報屋「Vermilion」 隣人 久我 長久 御坂 成見 思兼 なし 友人 八十神千鶴と観察者と猫と ※天河探偵事務所とは仕事上利用することが多い為、顔見知りにある。 制作者:しらにゅい 過去話:八十神千鶴の懐古たる記憶 収録場所 時系列331~360 その他いかせのごれ関係者